約 1,287,693 件
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/993.html
99 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 51 55 ID RYekf+Jw 柔らかい布団で寝たはずなのに、妙に体が痛い。 それが僕の起床時に抱いた最初の感想である。 左右から挟まれていたから、寝返りが取れなかったのだろう。 体を起こすと、香草さんも同様に体を起こした。僕のせいで起こしちゃったのか、それともまた起きていて僕が起きるのを待っていたのか。後者だったら理由が聞きたくもあるけど、僕の思い上がりだったら嫌だから聞くに聞けない。 「おはよう」 目をこすっていると、香草さんから笑顔で言われた。こういうのも、中々悪い気はしない。 「おはよう、香草さん」 僕がそう返すと、香草さんの笑みは一層明るくなった。 ポポはまだ寝ているみたいだ。そりゃ、ポポは香草さんの甘い香りを嗅いでいるんだから、香草さんと同様に起きれないのは無理もない。 確か草ポケモンの出す甘い香りには精神安定作用があるんだったっけ。その精神安定作用が香草さん自身にも作用してくれるとありがたいんだけど。 それとも、すでに作用しているのかな。そういえば昨日今日と、以前より態度は柔和だし。でもそう考えても進化前の態度の変化の説明がつかないしなあ。ダメだ、わかんないや。 こんな物思いに耽っている間も、やたら香草さんの視線を感じる。どうして彼女は行動せずに僕のことをじっと見てくるのだろうか。 僕の寝起きの顔はそんなに間抜けなのかな。 そんなことを考えながら、僕はポケギアで今がやはり早朝だということを確認すると、ポポをまたいでベッドを降りた。 「どこ行くの?」 「風呂に行こうと思って。洗濯もしたいし」 「私も行く」 そう言われて思わずドキリとしてしまった。風呂は別に混浴じゃないし、彼女は単に自分も行こうと思っていただけなのかもしれないのに。 でも、可愛い女の子にこんな言われ方したら、つい反応してしまうのが、悲しい男の性って奴だ。 二人で廊下を歩く。香草さんは僕の半歩後ろをついてくる。 無言がやけに気まずい。といっても、僕が勝手に意識してしまっているだけなんだろうけど。前はこんなことなかったのになあ。 ……というか、香草さんのほうからうるさいほど話しかけてきたから無言になることがなかっただけのような。 僕が何か話さなければと迷っているうちに浴場についてしまった。「じゃあここで」と言って香草さんと別れ、男湯のほうに進む。 洗濯物を備え付けの洗濯機に叩き込み、稼動させるとさっさと風呂に向かった。 まだ早いというのに、風呂には数人の男がいた。いや、逆にこの時間を有効活用しようとすると、必然的に風呂という選択肢を選ぶことになるのか。 そりゃ寝ることはどこでも出来るけど、風呂に入るのはどこでもってわけにはいかないからな。出発前にひとっ風呂、というわけか。 100 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 52 45 ID RYekf+Jw 体を流すと、湯船に浸かった。はあ、気持ちいい。体の凝りがほぐされていく。 風呂に浸かっている間、風呂にいた男達と世間話や近況報告などをした。ここにいた人は全員もう全国の旅に出発している組だった。 やっぱり時間を効率的に使おうという意識のある人たちは歩みが速いのか。噂や話を考慮すると、僕たちは割りと先頭のほうにいるらしいし。 僕は石英高原に一番乗りすることに興味はないから――早く着くことが選考基準になる職もあるから、人によっては殿堂入りよりも早く着くことに気合を入れているらしい。 通称最速組と呼ばれている。ちなみに僕のような殿堂入りを目指しているのは殿堂組と呼ばれる――、とりあえずそこまでせかせかする必要はなさそうだ。 僕はしばらくぼんやりと風呂を堪能した後、浴場の前まで出て行くと、香草さんが立っていた。 「ど、どうしたの?」 僕はおずおずと香草さんに問う。 「勝手にゴールドがどこかに行かないように、見張ってたのよ」 「見張ってたって……」 「だって、あの赤毛コンビに絡まれたときだって、あなたが勝手にどこかにいったのが原因みたいなもんじゃない。あのときはたまたま不審に思った私が後をつけていたからよかったものの……まったく、ゴールドは私がいないとダメなんだから」 誇るように胸を張って香草さんは言った。 不審に思ったって、僕はそんなに信用がないのかなあ。 赤毛コンビ。それはおそらくシルバーとランのことだろう。その言葉を言った香草さんには何の悪意もなかっただろう。でも、その言葉は僕の心に重くのしかかる。 「……どうしたの?」 「え、何が?」 香草さんに尋ねられて、慌てて僕は取り繕う。 「何が? じゃないわよ。今、すごい顔してたわよ。……もしかして、私といるのが嫌……とか」 香草さんは伏せ目がちにそう尋ねてくる。 顔に出てたのか。ダメだなあ、どうしてもアイツが絡むと、つい取り乱してしまう。 僕は香草さんの態度にドキリとし、慌てて否定する。 「ち、違うよ!」 「そ、そうよね! ゴールドが私と一緒にいたくないとか、そんなわけないわよね! ……だとしたら、さっきの表情は何よ」 香草さんは相変わらず伏せ目がちだが、視線をせわしなく左右に走らせている。少し挙動不審のような感じだ。僕の反応から、この話題が聞きにくいものだということを感じ取って、尋ねるのを躊躇しているのだろう。 確かに僕はあまりこのことを聞かれたくない。かといって何も言わないわけにもいかない。僕は言葉を選びながら、なんとか返答を取り繕う。 「……香草さんも分かってると思うけど、僕とアイツには……なんというか……因縁、みたいなものがあるんだよ」 「因縁? 何よそれ」 「う……ん、あまり人には言いたくないというかなんというか……」 やっぱり追求してくるなあ。どうしよう、困ったな。 「ゴールドの分際で私に隠し事する気?」 「分際って……」 香草さんに詰め寄られたじろいでいると、遠くからポポが僕を呼ぶ声が聞こえてきた。しかもどうやら涙声だ。 「ポポ?」 僕は声のしたほうに向き直って香草さんから目をそらしながら、大声でポポを呼んだ。ナイスタイミングだ、ポポ! 通路まで移動して覗き込むと、遠くから涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたポポがものすごい勢いで突っ込んできた。あれはまさしく電光石火。 101 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 53 43 ID RYekf+Jw 「ゴールドー!」 あまりの剣幕に、僕は思わず半歩下がって壁の影に隠れる。結果、ポポはそのままの勢いで、したたかに壁に全身を打ち付けられた。 「……」 「……」 「……」 なんだろうこの空気は。 全員無言で静止している。 そんなとんでもないシュールな空気は、ポポの泣き声で打ち破られた。 「びどいでずごーるど……なんでよげるでずが……」 ポポの発する文字すべてに濁点がついているようだ。そりゃああの速度でコンクリートの壁に全身強打したらそんな風にもなるよね。 「よしよし、痛かったねー。ごめんねー」 僕はポポを覆うように抱くと、なぜか小さな子供をあやすかのように慰めた。ポポは小さな子供、というほどではない年だろうけど、何故かこの行動が一番適切に思われたからだ。 その後、通りがかる人の奇異の視線と香草さんの視線に晒されながらも、ポポが泣き止むまであやし続けた。 あれだけ強く衝突したのに、ポポに目立った外傷がなかったのが驚きだ。やっぱり華奢に見えても、人間とは根本的に強度が違うんだろうなあ。 「どうしてあんなに慌てて走ってきたのさ」 ポポがとりあえず落ち着いたので、僕は当然の質問をする。すると泣き止んでいたポポの瞳に再び見る見る間に涙が溢れてくる。 「そうです! 起きたらゴールドがいなかったから、ポポをおいていっちゃったんじゃないかと思ったんですぅー」 涙声でそういうと、また僕に抱きついてわんわん泣き出した。 そういうことか。でも、確かにポポに何も告げずにおいていったのは悪いと思うけど、さすがにこれは過剰反応なんじゃないのかなあ。 「ごめんね。今度からはそんなことのないようにするよ」 寝てるときにいちいち起こすのは気が引けそうだなあ。でもとりあえずこう言っとかないと収まりそうにないし。 「そういえば、ポポも風呂入ってきたら?」 と、ここまでいって気がついた。ポポは今きている黒のワンピース以外の服を持っていないじゃないか。……まあ乾くまでの間、ポポには裸でいてもらえばいいか。部屋にいればいいことだし、どのみち羽毛で覆われているので問題はないはずだし。 「香草さん、面倒みてもらえないかな。また行かせて申し訳ないんだけど、ポポ一人だとやっぱり不安だし」 僕がそう頼むと、香草さんは露骨に嫌そうな顔をしていた。しかし、何かに気づいたような顔をしたかと思うと、ポポを僕から引っぺがし、そのまま女湯のほうに引っ張ってった。 ポポが、ゴールドから離れたくないですー、と言ってもがこうが聞く耳無しだ。 「じゃ、じゃあ僕、部屋に戻ってるから」 脱衣所から聞こえてくる彼女達のキャットファイトを聞いていても仕方ない……というかいろんな意味でアレなので、僕は一人洗濯物を持って部屋に戻った。 102 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 54 48 ID RYekf+Jw 荷物の確認と点検をしていると、二人が戻ってきた。ポポは胸から下を覆うようにタオルを巻いている。こんな格好をしたらむしろ目立つんじゃないだろうか。 「それが、ちょっとね……」 香草さんはなにやら言いにくそうにしている。普通に全裸はまずいから、と言えばいいようなものなのに、どうしたんだろう。 「もう部屋に戻ったから脱いでもいいですね?」 ポポはそういうと、香草さんが止めるより早くタオルを解き放った。 見える。 ……見える? 僕がポポと初めてあった時、ポポの胸部や胴部は羽毛で覆われていて素肌は見えなかった。 ところがどうだろう、今は進化の影響か、というか僕は何かあるとすべて進化の影響にしている気がするが、まあなんというか羽毛が以前より格段に薄いというか、 濡れていることもあいまって羽毛の絶対量が減ったのに嵩も減っていて、つまりそのまあ放送できない部分が普通に見えてしまっているというか、 僕の記憶ではパンツは二枚買ったはずなのになんではいてないのというか、パンツはいてない状態というか、パンツはいてない状態というか! ぱんつはいてない状態というか!! でもそもそもこのくらいの年ならかろうじてセーフなのかというか、そもそも僕ポポの年知らないじゃんというか、香草さんの蔦がポポのその放送禁止の部分を覆い隠すとともに僕の目を潰さんと伸びてくるというか、 蔦はやっぱり万能だな、と思いつつも蔦が来ることは分かっていたので蔦を回避できたが、追撃で足を払われ、倒されることで視界をフェードアウトさせられ、僕が地面に頭をぶつけ、 視界が安定するころにはすでにポポの胴部にはタオルが再び巻かれていた。 何が起きたんだ。 脳がパニック状態で、いまいち事態を正確に飲み込めない。 しかし先ほど僕の目に映し出された景色は……。 「忘れなさい!!」 香草さんが僕の頭めがけて放った蔦の一撃を、首を右にずらすことで何とか回避する。 これはきっと僕の頭部に強い衝撃を与えることで直前の記憶を飛ばそうとしているんだろう。ええい、僕がつい最近に頭部に強い衝撃を(香草さんに)加えられたのを忘れたか! そんなしょっちゅう頭打ち付けてたら頭おかしくなっちゃうよ! 「止めるです!」 僕の身の危険を理解したのだろう、ポポが両翼を広げて僕の前に立った。 タオルは巻きなおされたとはいえ、もともと丈が短いので、床に横になった僕のアングルからだときわどい! も、もう少しで見え……見……じゃない! 何を考えているんだ僕は! 香草さんも瞬時にそれを理解らしい。一瞬般若のような恐ろしい表情をしたが、すぐに真剣な表情に変わり、ポポに話しかける。 「バカ! お風呂での打ち合わせ忘れたの!? 大体、私はアンタが何かしなきゃゴールドに危害を加えるつもりはないわよ!」 打ち合わせ? なんだそれは。 しかし当然のことだろうけどポポには何か伝わったらしい、ポポは「そうでした!」というと僕の前からどいた。 きっと香草さんは今にも僕を蔦で縛り付けて僕の頭をぶつけながら床と天井を往復させたいのだろうけど、状況的にそれは厳しいと妥協してくれたらしい。僕が恐る恐る起き上がっても、彼女の蔦は飛んでこなかった。 彼女はといえば、ポポにパンツをはかせている。そうか、もともと換えの下着を風呂まで持ってきていなかったのか。それならばパンツはいていなかったのも納得だ。うん、実に自然なことだ。興奮で若干思考がおかしくなってる気がするけど、それはきっと気のせいだ。 103 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 56 00 ID RYekf+Jw 僕がベッドに腰掛けると、向かい合うように香草さんとポポは並んで反対側のベッドに腰掛けた。胸部の問題もあるので、パンツをはいてもポポのタオルは巻かれたままである。 いや、考えようによってはベッドに腰掛けているためパンツ見放題という普段から考えればボーナスステージのような状況なんだけど、ポポのパンツは香草さんの蔦によって見事に隠されていて、 糸の一本も見えやしない。というか香草さんの蔦って何本まで出るんだ? 「それで、打ち合わせって何なのさ」 僕は先ほど香草さんがポポに言ったことを尋ねる。どうせ碌なことじゃないんだろうけどさ……。 香草さんはいかにも「失敗した!」というような表情をしたが、すぐに気を取り直したのか、僕の目を見ると、半身を前に乗り出した。 「あの赤髪のアホ二人についてよ」 ああ、そのことか。まだ諦めてなかったのか。というか、アイツがただのアホだったら、話はこんなにややこしいことにならず、もっと簡単に解決していただろうに。 「香草さん、さっきも言ったけどさ、僕はそのことをあんまり人に話したくないんだよ」 「人って何よ、私たちはパートナーでしょ? いわば家族みたいなものじゃない! なら隠し事は無しよ!」 うわ、痛いところついてくるなあ。確かに、長い旅をともにし、旅を制覇することのできた人間にとってはパートナーは一生ものの付き合いになることも少なくない。 そういう意味じゃ家族という言葉も、まだ旅に出ていくらも経っていないことを無視すれば、あながち大げさでもない。 「か、家族でも秘密の一つや二つあるしさ……」 僕はそう言いながら、リュックに手を伸ばした。なぜあのプライドの高い香草さんがすんなりとポポを風呂に連れて行って、しかもそこで「打ち合わせ」なんてものをしてきたのか検討がついてしまったからだ。多 分香草さんも、話し合いで何とかなるなんて本気で思っているわけじゃない。いざとなったらポポと二人で僕を取り押さえるつもりなんだろう。ポポの速度はこと取り押さえなんて場面においては恐ろしい。 ただ、やはり実力行使は最後の手段にしたかったのだろう。 「ゴールド、なんでリュックを掴んでるのよ」 香草さんは当然僕の動きに気づいて、半ば咎めるように言ってくる。 「い……いや、手が落ち着かなくてさ」 対する僕はこんな言い訳を取り繕うのが精一杯だ。 「じゃ、じゃあ、手、つないであげるから、リュックは放しなさいよ」 香草さんはわずかに頬を赤らめ、右斜め下あたりを睨みながら手を差し出してくる。 リュックを放させるために手をつなぐ、という発想が普段ならば可愛らしく思えるのだろうけど、今の僕にそんな余裕はない。 「で、でも手は二つあるし……」 「ポポもつなぐですー!」 ポポはそう言って元気よく両翼を挙げた。 まずいぞ。もうすでに戦いは始まっているのか。リュックから手を離し、かつ両手を封じられてしまったら僕に勝機はない。……勝機は最初からないけどさ。 しばらくジリジリと互いを見る。今余計な動きをするわけにはいかない。おそらく香草さんもそう思っていることだろう。となると、ポポが行動不確定分子だな。 が、僕の恐れを知ってか知らずかポポは動かなかった。いや、ポポが動き出す前に、痺れを切らした香草さんが先に動いた、というべきか。 104 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 56 34 ID RYekf+Jw 袖口から僕を拘束しようと数本の蔦が飛び出してくる。 僕は半身を右に振ることでかろうじてそれを回避する。そしてそのまま立ち上がり、出入り口へと加速を開始する。 しかしそのようなことを考えない香草さんではない。蔦が数本、ドアの前を回り込むようにして僕に伸びてくる。ドアから出ようと思えばこの蔦を回避することは不可能だ。 香草さんの蔦の強度は以前コッソリ確かめてある。十得ナイフ程度では到底切断は不可能だ。しっかりとしたサバイバルナイフならば切断も可能だが、一本を切断するほどの時間があれば彼女は僕の両手両足絡めとることができるだろう。 僕はリュックの中に手を突っ込み、煙幕弾を掴んで取り出した。しかし、僕はそれをすぐさま使おうとはしなかった。 「香草さん、落ち着いてよ!」 僕は煙幕弾を二人に見えるようにしながら、香草さんと向き合った。 僕に届く寸でのところで、香草さんの蔦は静止する。 「……なに、それ」 そう言う香草さんの声はぞっとするほど低く、暗い。もし僕が香草さんという人間をまったく知らなかったら、寒気さえしていそうだ。 「煙幕弾。要するに目くらましだよ」 「……それで?」 「話し合いってのはもっと平和的にすべきだよ。香草さん、僕は逃げるってことに関しては、同い年くらいの普通の人間の誰にも負けないっていう自信があるんだ。 ただテレポートを使えるってだけの人間よりも、ね。さすがにテレポートが使えて、僕並みに準備をしている人には適わないと思うけどさ」 「だから、なんだっていうの?」 「だからさ、香草さんが強硬手段に及ぶなら、僕はここから逃げて交番に逃げ込んだっていいんだ。でも、そんな大事にはしたくないんだよ」 「この状況で? ドアの前にある私の蔦が見えないの? 逃げ場は無いわよ」 香草さんは半ばバカにするように言った。 「見えてるよ。ただ、この程度で逃げ場が無いなんて、お笑いだよ。せめて、窓も抑えてから言うべきだ」 対して、僕も挑発的な口調で答える。 「あら、窓までは随分距離があるわよ」 香草さんはそう言いつつも、窓の前まで蔦を伸ばす。 「これで、逃げ場はないわよ」 「いや、まだまだだよ。もしそこを塞がれたら逃げられなくなるんだったら、最初から教えたりはしないよ」 「……ハッタリだわ」 「試してみる? でも、二人とも損をすることにしかならないと思うんだ。僕はやっぱり、殿堂入りしたいしさ」 「そもそも、二対一なのよ?」 「二対一なんてことは問題にならないよ。特にこんな狭い部屋じゃね。混乱したりしたら、ポポのスピードなんかは逆に仇になると思うけど?」 僕のその言葉を最後に、そのまま暫し膠着状態になった。香草さんは僕の実力を測りかねているのだろうし、ポポはさっきも展開についていけてないみたいだから、どうしたらいいのか分からないんだろう。 冷静になって考えれば、そもそも彼女らにとってすればこんな小さなことでこんな大きなリスクを払うこと自体、馬鹿げてる。 105 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 57 12 ID RYekf+Jw 長い沈黙の後、香草さんはゆっくりと蔓を元に戻した。 僕は安心して息を吐く。 「分かってくれて嬉しいよ」 「でも、隠し事はやっぱりダメよ」 香草さんは僕を咎めるように言う。う、確かにそれを言われると弱いんだけれども……。 「うーん……香草さんにだって、僕に知られたくないことの一つや二つくらいあるだろ?」 「ポポは無いですー!」 「はいはい、分かったよ」 そりゃ、ポポは無くても不思議もないけど、香草さんはそうはいかないだろう。 「わ、私だって、ないわよ!」 香草さんはポポに先を越されたせいか、慌ててそう言った。その様子を見て、僕の心にわずかに悪戯心が芽生える。 「ホントに? じゃあとりあえず胸のカップ数教えてよ」 「へ、変態!」 香草さんは僕の思ったとおり、顔を真っ赤にしていい反応をしてくれた。 「カップ数ってなんですか?」 ポポの質問を無視し、僕は一応自分の発言を取り繕う。 「しょうがないじゃないか、答えにくい質問じゃないとダメなんだから」 香草さんはしばらく、自分の身をもじもじとよじっていたが、意を決したかのように、ポツリと呟いた。 「え……」 「え?」 僕は意地の悪い笑みを浮かべながら、香草さんに聞き返した。 「……………………Fよ」 「いや、さすがにそれはない」 「……」 「……」 「Fってなんですか?」 「う、うるさいわね! アンタに胸のことなんか分からないでしょ! 女の子の胸見たことあんの!?」 「さっきポポの胸なら」 「忘れなさいって言ったでしょ!」 「また見たいですか?」 「アンタは黙ってなさい!」 「だって香草さんがちゃんと答えないからだろ!」 「そもそも女の子に面と向かって胸のサイズとか聞いてんじゃないわよ! このド変態!」 「じゃあ僕の過去だって聞かないくれよ!」 「だって、私はあなたの過去を聞いてるんだから、私の過去について聞くべきよ!」 ……一理ある。 「じゃ、じゃあ……恋愛経験、つまり好きな人は誰かとか……」 ……こんな陳腐な質問しか思いつかない自分の貧しい想像力な嫌になる。 「ポポはゴールドが好きですー!」 「はいはい、分かったよ」 「ホントに好きなんです!」 「はいはい、後五年もしたら意味が分かると思うから」 あれ? ポケモンの知能の発達は年齢じゃなくて経験とか進化に依存するんだっけ。 「……わた、私は……」 「私は?」 僕は再び意地の悪い笑みを浮かべながら、香草さんに聞き返した。 「わ………………いないわよ」 「何今の間」 「う、うるさいわね! 特に意味は無いわよ!」 はあ、と僕は一つため息を吐いて続ける。 「大体さ、僕が嘘をつかない保証なんてどこにも無いじゃないか」 「ポポはゴールドを信じてるですー!」 「はいはい、分かったよ」 「私だって、ゴールドを信じてるわよ!」 香草さんは、そんな人の言うどんなことでも鵜呑みに出来るほど純真でも馬鹿でもないと思うんだけどなあ。 「じゃあ言うよ。二人とはただの初対面。会ったこともありませんでした」 106 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 58 25 ID RYekf+Jw 「どうして嘘吐くのよ!」 案の定、彼女は語気も荒く怒鳴ってくる。 「ホントのことだよ。信じてるんじゃなかったの? それに、自分は嘘を吐いておいて、人には本当のことを言ってもらおうだなんて、都合よすぎだよ」 僕も、いくら隠したいとはいえ、よくもいけしゃあしゃあとこんなことを言えたものだ。 香草さんはその言葉を受けて、苦虫を噛み潰したような顔をして僕を睨んでくる。彼女の袖口にはユラユラと蔦が飛び出しかけてきていた。 僕は右手に握られた煙幕弾を握りなおすとともに、左手でベルトに着けられた『怪しい光曳光弾』に手をかける。こんな天井の低い部屋で使ったら、天井に若干の焦げが残るだろうけど、部屋の損傷など、僕の命の損失に比べたら安いもんだ。 「……Aよ」 僕の緊張を知ってか知らずか、香草さんは唐突にそう呟いた。 「え?」 「胸のサイズよ! あなたが言えって言ったんでしょ!」 時間差があったから反応が遅れた。 「え、ああ、Aね」 目で見た映像的にも、多分真実だよね。 「い、いいい言っとくけど、Aって言っても限りなくBに近いAなんだからね! そこを誤解しないでよね!!」 「ご、ごめん」 なぜだから知らないけど、香草さんの剣幕に押されて謝ってしまった。 「じゃあ、アンタもホントのこと言いなさいよ」 「へ?」 呆気にとられていたせいで、一瞬彼女が何を言っているか理解できなかった。 「へ? じゃないわよ! こんなこと聞いといて、ただで済むと思ってたの!?」 「え……いや、半ば香草さんが勝手に言ったというか……」 「いうか?」 香草さんの袖口には、袖を切り裂かんばかりの大量の蔦が殺到していた。ああ、こんなに香草さんが化け物染みて見えたのは初めてです。もうこうなってしまえば、僕はまともに旅を続けるためには全自動平伏装置と化す他になかった。 「はい、言います……」 「もう嘘は吐かないでよね」 「はい……」 というわけで、僕は洗いざらいすべてを話してしまった。嘘を吐こうと思えば吐けたかもしれなかったけど、この状況で嘘を吐けるほど、僕は大胆でも命知らずでもなかった。もっと有体に言えば、僕は臆病なのだ。 「それで、どうしてそんなに話したくなかったの?」 僕の話を聞き終わった香草さんは、まずそう尋ねてきた。ちなみにポポは僕の話の途中で二度寝タイムへと突入していた。 「どうしてって……だってさ、僕がちゃんとアイツの正体に気づいていれば、ランのお父さんも死ななくて済んだし、ランだってさらわれて、こんなことにならずに済んだはずだったんだ」 「考えすぎよ」 香草さんは優しいような、毅然としたような口調でそう言った。 「ごめん、慰めないで欲しい」 僕はたとえ誰が許しても、ランを救い出してシルバーにしかるべき処置を与えるまで、いや、それが叶っても自分を許すつもりはない。失われたものは帰ってこない。慰められると自分の無能さを責められるようで、余計惨めになる。 「……ごめんなさい」 「いや、僕のほうこそ」 また気まずい空気になってしまった。 107 :ぽけもん 黒 緊張と告白 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/19(水) 17 59 01 ID RYekf+Jw 「そういえば朝食まだだったよね。そろそろいい時間だろうから食べに行こうか」 なんとかこの空気を打破しないと。 僕はそう思ってなんとか話題を取り繕う。 「そ、そうね」 香草さんも素直にその流れに乗ってくれた。 「ほら、ポポ、起きて」 ポポを揺すって起こす。 「……んあ…………ね、寝てないですよ! 起きてたです!」 起きたポポは両翼をバタバタとバタつかせながら慌てて自分が起きていたことをアピールする。なんだか微笑ましい。でも左の翼が香草さんにバシバシ当たってるからやめたほうがいいと思うな。 「はいはい、分かったよ。朝ご飯、食べに行こう」 そう言うと僕はポポの手を引いて起こした。香草さんはさっきのポポの行動のせいだと思うが、少しむっとした表情をしている。 洗濯と乾燥の済んだ服を取りに行き、ポポに着せると、そのままポポの手を引いて食堂へ行った。久々にちゃんとした食事にありつくことができたような気がする。 ポポの食事は相変わらず香草さんに手伝ってもらった。つくづく、蔦というものは万能だな、と再確認させられた。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/281.html
466 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 14 26 ID ZE6PRlQg ポケットには収まりきらないような怪物、縮めてポケモン―― 僕達が住んでいるこの世界には、そう呼ばれる、人間とも、その他の動物とも一線を画した独自の生物群が存在している。 容姿は種族によって異なるのだが、人間と、植物や動物とのハイブリッドのような見た目をしているものが多い。 ポケモンは種によっては、動物や植物、はたまた人間と交わり種を残す、という特殊な芸当が出来るものもいる。 そしてそんな容姿どおり、彼らは、人間に使えないような特殊な能力と、植物や動物には無いような、人間に近い高等な頭脳を備えている。 我々人間は、そんな彼らと時に協力し、時に相愛し、そして時に対立しながら生きていた。 今日は十五の誕生日。 僕達の国には、ポケモンと人間の相互理解のために、十五になるとパートナーとなるポケモンをつれて、国内を旅する、ということが法律で定められている この旅は、パートナーとの友好度や戦術、出会ったポケモンの数やパートナーとなる契約をしたポケモンの数、それらのポケモンの生態などの研究等々の個人の資質と、人間とポケモンの人格を測る、国による試験も兼ねている。 将来ポケモンの研究をしたい僕にとっては、研究員の資格を得るために、厳しい試練をクリアしてポケモンマスターを目指すというシビアな旅なのだった。 というわけで、夢の実現を果たすための第一歩、パートナー候補のポケモンとパートナー契約を結ぶべく、あのポケモン研究の権威である大木戸博士の助教授を勤めていたこともあった、宇津木博士の勤める上都ポケモン研究所に来ていた。 467 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 14 49 ID ZE6PRlQg 「はあ……」 白を基調をした明るい色合いの研究所の前で、僕はため息をついた。 実は落ち着かなくて、ついつい説明会の三時間も前に来てしまったのだ。我ながら、度胸がない自分が恥ずかしい。 「はあ……」 さすがに三時間前じゃ研究所内に入ることも出来ない。もう一つため息をつくと、その辺で暇を潰そうと、研究所をあとにしようとする。 「はあ……」 と、研究所に背を向けた僕の耳に、僕のものではないため息と思われる声が聞こえてきた。 右を見れば、大きな赤い目を持つ、女の子がいた。 髪は萌黄のような黄緑色をしていて、深緑の玉で縁取られた黄緑のワンピースを着ている。 そしてこれまた黄緑のポシェットを脇に提げていた。 ここまでなら、ちょっと変わった可愛い子だなー、で通っただろう。 しかし、彼女の頭頂部からは、深緑のような深い緑色をした大きな葉っぱが生えていた。 ポケモンだ。 見た目から考えて、おそらく草タイプに分類されるであろうポケモンの美少女が、悩ましげな表情を浮かべて、研究所を見ていたのだ。 もしかして、彼女も旅の参加者なのだろうか。 若干幼い印象を受けなくも無いものの、十五に見えないことも無い。 しかし参加者ならば普通まだ集まってもいないだろう。なにせ三時間も前だし。 まあ、ここで出会ったのも何かの縁だ、どうせこれから暇だし、話しかけてみるか。 「あのー、もしかして参加者の方ですか?」 「ひゃ! あ、あの、どちらさまですか?」 驚かれてしまった。僕はそんなに怪しい風貌をしているのだろうか。ここ数日、緊張のあまり満足に寝れなかったからかなり血色は悪いだろうけど。 「い、いやー、こんなところにいるから、もしかして参加者の仲間かなーと思ってさ。僕は参加者のゴールド。人間だよ」 「まだ説明会まで三時間もありますよ? 一体何を考えているんですか?」 と、少女から冷たい口調で厳しい台詞と、アホを見るような視線を受けた。 まったくの正論なんだけどさ……。 「は、ははは、落ち着かなくてさ。じゃあ君は個人的用事なのかな?」 僕は苛立ちが表面にでるのをなんとか押さえ、苦笑いをしながら、彼女に尋ねた。 「いえ、私も参加者なので」 彼女は平然とそう答えた。 468 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 15 17 ID ZE6PRlQg ……おい。 人を馬鹿にしといて、自分も参加者かよ。 「じゃあ、どうして三時間も前に来たのさ?」 「そんなの、私の勝手です。いちいちうるさい人ですね」 彼女は顔をしかめ、煩わしそうに答えた。 ……あれぇ? 僕うるさかったかなあ。うーん、そんなにうるさくした覚えはないんだけれども。 「もしかして、緊張のあまり早く来すぎた、なんてことはないよね?」 「そ、そんな訳ないです! どこかのバカと一緒にしないで下さい!」 まさかと思いつつもカマをかけて見たら、ものすごく分かりやすいリアクションをしてくれた。 「ぷ、くくく」 僕はそんな彼女の様子がおかしくなって、思わず笑い出してしまった。 「な、そんなにおかしいですか! あなただって同じなくせに!」 「いやあ、僕のほかにこんな人がいるなんて思っても見なかったからさ」 「一緒にしないで下さい!」 同じだと言ったり、一緒にするなと言ったり忙しい子だ。 しかし、こうしてみると、彼女のふくれっつらも、厳しい言葉も可愛らしく思えるから不思議だ。 彼女はしばらく僕を睨んでいたが――もしかしてこれがにらみつける? 僕の防御力を下げているのか?――、突然プイっとそっぽを向き、そのままズンズンと大股で歩き出した。 「どこに行くのさ」 「ついてこないで下さい! 警察に訴えますよ!」 う……随分と嫌われたものだなあ。もしかして僕はポケモンが不快になるような何かを出しているのだろうか――いやいやそんなはずは無い。ポケモンの友人も結構いるし。 となると、やはり寝不足のせいかな。 原因をそうと決め付けた僕は――け、決して現実と向き合うことを逃げたわけじゃない――、ちょうど研究所の傍にある公園にベンチがあるのを見つけ、時間までそこで横になることにした。 ポカポカとした朝の日差しとさわやかな春の風が気持ちいい。 寝不足の僕がそんなコンボを喰らって無事でいられるわけがなかった。 僕はそのまま眠りに落ちていってしまった。 「う、うーん……」 眩い日差しに照らされて僕は眼を覚ました。 目を開けると、太陽がかなり高く見える。 上体を起こし、寝ぼけ眼をこすりながらポケギアを開く。 表示されていた時間は、説明会の開始時間を三十分も過ぎていた。 頭の中にかかっていた霞が、一瞬で蹴散らされた。 ベンチから飛び降り、ダッシュで研究所に向かう。 入り口には研究員と思しき、白衣を着た男が一人立っていた。 「す、すいません! 説明会って」 「ああ、もう始まってるよ。早くポケギア出して」 研究員は参加する予定だった人数がそろってないことから、僕が遅刻していることを分かっていて立っていたのだろう、呆れたような視線を僕に向ける。研究員は態度だけでも「余計な手間増やさせやがって」という言葉が聞こえてきそうな様子だ。 469 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 15 42 ID ZE6PRlQg 僕はさっきから手に握り締めっぱなしのポケギアを研究員に渡すと、男はそのポケギアを機械にかざした。 ピッ、と電子音が鳴る。 「はい、これでOK。会場は壁に貼ってある順路図のとおりに進んでいけば分かるから、急いでね」 「はい! すいませんでした!」 僕は研究員から返してもらったポケギアを握り締め、研究所に入った。 壁には分かりやすいように矢印の印刷された紙が貼ってある。 僕が走ってその矢印のとおりに進むと、程なく会場の前の角についた。 角を曲がった先、つまり会場と思われる場所から人の話し声が漏れ聞こえてくる。 まずいな……。当然だけど完全に遅刻じゃないか……。 立ち止まって少し呼吸を整える。 「はあ……」 ため息を一つつき、覚悟を決める。 「はあ……」 と、僕のものじゃないため息がどこかから聞こえてきた。 冷静になって見てみれば、角の陰から黄緑の物体が覗いて見れる。 そして、深緑の葉っぱがピョコンと陰から飛び出した。 ……見、見なかったことにしよう。 それだけで陰にいるのが誰だか分かってしまったけど、彼女と話している時間はない。それに遅刻しといて、その上廊下で話しているとかどれだけ非常識なんだ。 ……こんな日に遅刻しただけで十分非常識であることはよく理解している。 こんな時間にこんなところにいるってことは、やはりなんらかの事情で遅刻してしまい、そしてそのことが後ろめたくて会場に入るに入れず途方にくれている、といったところだろう。 まるで僕みた――いや、こんなこと、知るだけで彼女は怒るだろうな。 僕は胸を張って大股に歩き、角を曲がり彼女の前を通り過ぎた。 横目に、目を見開き、口をポカーンと空けている彼女が見えたが、視線も向けずにスルーした。 目を合わせれば、確実に会話か口論が始まる、という確信があったからだ。 僕はそのまま一息に会場の扉の前まで来ると、ゆっくりと扉を引いた。 「すいません! 遅刻しました!」 人の頭を見なくていいように、深々と頭を下げる。 会場は一瞬間静寂に包まれ、そしてその後笑いが巻き起こった。 見えないが、痛いほどの視線が降り注がれているのがよく分かる。 「あー、いいから空いている席に座りなさい」 困惑したような声が僕に向けられた。 宇津木博士のものだろう。 顔を上げると、会場には五十人くらいの人間と、同数のポケモンがいた。 ほとんどはもう前に向き直っているが、中に数人、ニヤニヤしならがこちらを見ている者もいる。 470 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 16 19 ID ZE6PRlQg 会場内を見回すと、空いている席は前のほうにしかない。 僕は小さくなりながら、人々の脇をとおり、その空いた席に着いた。 と、僕に続くように席に着いた者がもう一人。 見れば、例の彼女だった。 僕に便乗して、目立たないようにしたわけか。 僕は恨みがましい視線を向けてやるが、彼女は微妙に視線を正面から反らして、顔が見えないようにしている。 心の中でまたため息をつくと、机に置かれた資料を開いた。 宇津木博士の説明はその資料に準拠したものであり、その資料を見れば遅れてきても困るような点は無いようだった。 しばらく続けられた説明の後、宇津木博士は机の上に置かれた封筒の中を見るように指示した。 「これが、人間とポケモンとのパートナー契約書です。先ほど説明したとおり、必ずこの会場内で一人一人がパートナー契約を結ばなくてはなりません。 ご存知のとおり、整備された街道から僅かに外れただけでも野生のポケモンが出没します。もしそれが凶暴なものであったら、無力な人間だけではどうすることもできないからです。 逆に街では人間と共にいるということが警察の保護を受けられるということになり、ポケモン自身の身を守ることになります。というわけで、これから自由時間としますので、パートナーとなる人を決めてください」 その言葉で、静かだった会場内がワッと騒がしくなった。 ……パートナー契約ってどうやったらいいんだ? もしかしたら、いやもしかしなくても最初の方に説明があったのかもしれない。 資料の目次を見て、それと思しきページを見る。 えーと、役所が発行している人間とポケモンで契約書を交換して、その後その契約書を役所に届け出るらしい。……ここ研究所だよな。 と当惑していたら、早くも契約を結んだと思しきペアが宇津木博士に契約書を渡していた。なるほど、今回に限り、博士のほうで手続きしてくれるのか。 そうこうしているうちに、もう半分近い人たちが契約を済ませたか契約に入ったかしている。これはまずい。 とりあえず、序盤のジムの都合上、炎タイプか電気タイプ等の属性のポケモンと契約したい。一番まずいのが草だな。飛行にも虫にも弱点とかいいとこなしだ。序盤はまだ慣れないのに弱点続きは避けたい。それに草タイプは全体的に弱い、という研究報告もある。 となればうかうかしれられない。一人でいるポケモンを見つけると、早速話しかけてみる。 「あのー、契約まだですよね? 僕とけいや……」 「ごめん、こんな大事な日に遅刻してくるような非常識な奴とは契約できない」 冷ややかな視線を向けられ、一蹴されてしまった。 う……やはりかなり悪印象のようだ。 しかし気にしてもいられない。すぐに別のポケモンに声をかける。 「あのー」 「すいません……」 声をかけただけなのに、頭を下げられ、そしてそのまま歩き去られてしまった。 そりゃあポケモンにとってもパートナー選びは大切だ。人によって長さは異なるが、しばらく旅を共にすることになる相手だ。もし僕がポケモンだったとしても、こんな日に遅刻してくるような常識の欠如した奴とは契約したいだなんて思わない。 そうと分かっていてもこれは凹む。どうして寝過ごしてなんかしまったんだ、と悔やまずにはいられない。 471 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 17 01 ID ZE6PRlQg そうこうしているうちに、ほとんどの人が宇津木博士の前に出来た列に加わっているか、契約を終えて会場から出てるかしてしまっていた。 残っているのは…… と、会場内を見回したところで、あの彼女と目が会った。 彼女もコッソリ入ったとはいえ、大体の人が遅刻してきたことに気づいているだろうし、それに見るからに草ポケモンだから倦厭されているのだろう。 ジムリーダーは定期的に入れ替わるっていうけど、草にとって相性の悪いタイプが最初に二つ続くなんて、今年旅立つことになる草ポケモンはかなり理不尽な思いをしているに違いない。 しかし同情はしても彼女と組む気にはなれない。 彼女も考えていることは同じらしく、すぐに視線を逸らした。 しかし妙なことに、彼女は自分から人に声をかけている様子がない。 おかしいとは思ったものの、僕も視線を逸らして人を探す。が、もう全員が契約を結んでしまったようだ。 なんてこった……。じゃあ彼女と契約を結ぶほかないじゃないか。 しかし僕はそんなことはおくびにも出さず、彼女に歩み寄る。 「あ、あのさ、もうみんな契約しちゃったみたいだし、僕と契約しない?」 だが、僕の言葉を聞いた彼女は露骨に嫌そうな顔をして、会場内を見渡した後、多分誰も他に残りがいないことを確認したのだろう、大きくため息をついて、契約書を差し出してきた。 「早く出しなさいよ……」 彼女は苛立たしげに僕を睨む。 それで僕は慌ててその契約書を受け取ると、急いで契約書を取り出した。 「あ、朝も言ったけど、僕はゴールド。ポケモンマスターを目指してるんだ。よろしくね」 僕はなるべく明るい口調で言いながら契約書を差し出した。 彼女はそれをぞんざいに奪い取ると、ボソボソと話し出した。 「私はチコ……何その手?」 「あ、握手でもしようかと思って」 「止めてよ」 厳しい口調で言うと、彼女は僕の手をはらった。 さ、さすがの僕でもこれだけやられたら平常心ではいられない。……でも、ポケモンマスターを目指す旅となれば、かなり長い旅になることは必至。ならば旅に出る前から関係を悪化させるようなことは出来ない。 しかしこんなに失礼な態度をとり続けているってことは、彼女――チコは必須課題の“おつかい”だけで旅を終える気なのだろうか。 確かに、必修の課題はこれだけだ。これを終えれば、一応旅を終えることは出来る。……その代わり、ポケモンと人間の双方が関わるような仕事には絶対に就けないが。 彼女はもしかしてかなりの差別主義者で、最初から自分の出身のポケモンコミュニティー内で、人間とは関わらずに生きていくつもりなのかもしれない。となると、早々に野生のポケモンとパートナー契約しなくてはな。 僕は陰鬱な気持ちに包まれたが、だからといって仏頂面を向けてるなんて無礼だと思い――もっとも、チコはずっと無表情なのだが――、一応の笑みを作っておく。 チコは僕の顔を一瞥すると、目を伏せた。 か、顔も見たくないってことか!? 「じゃ、じゃあ宇津木博士のところ行こうよ」 僕はそれでもくじけず、顔に笑みを貼り付けたまま努めて明るい声で言った。 「……はい」 それに対して彼女は、もはやダウナーとも言える空気を出している。 く、くじけないぞ! くじけるもんか! 僕は心の中で自分を励ましながら、宇津木博士の前の列に並んだ。当然最後尾だ。 他のコンビはぎこちないながらも、互いに自己紹介をしたり、談笑したりしている。 それなのに、僕達ときたら……。 まったくの無言だ。しかも彼女はうつむいていて、表情すら伺えない。 ……なんだか、少し泣きたくなってきた。 そんな地味な罰ゲームのような一時を耐え、ようやく僕達の番が回ってきた。 472 :ぽけもん 黒 旅立ちの朝 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/03/23(日) 02 17 24 ID ZE6PRlQg 僕達は博士に契約書を差し出す。 「君達で最後か……えーっと、若葉町在住の若葉ゴールド君と、若葉町在住の香草(かくさ)チコさんだね」 「はい」 「……はい」 宇津木博士は僕達の名前を読み上げると――香草さんっていうのか。しかしこの町に住んでいるのに一度も会ったこと無いなんて――契約書をスキャナーで取り込んだ。 「はい、これで登録されたよ。後はお互いに契約証明書にあるバーコードをポケギアで読み込んでね。後、これがおつかいで届けるものだから。それと、入り口にいる助手から傷薬を受け取ってね」 そう言って博士は二通の契約証明書とポケギアくらいの大きさの、茶色い紙で包装された小さな小包を差し出した。 僕はそれを受け取ると、僕のものだった契約書を香草さんに差し出した。道具類の管理は人間の仕事だから、この小包は当然僕が持つことになる。 彼女はポシェットからポケギアを取り出すと、契約証明書のバーコードをリードしていた。 僕もそれにならって、ポケットからポケギアを取り出すと、バーコードをリードした。 するとポケギアがピピッっと電子音を発し、写真を含む彼女のデータを表示した。 へー、タイプはやはり草、それも単色だ。特性は深緑。使える技は蔓の鞭に宿木の種、それに体当たりの三つか。……睨みつけるは使えないんだな。確かに僕の防御力が低下したように思ったんだけれども。 「じゃあ行こうか」 僕はまだポケギアを覗き込んでいる香草さんに声をかける。……人間のデータなんてほとんど見るところ無いんだけれどな。 彼女は答えることも無かったが、ポケギアをしまって歩き出した。 やれやれ、とため息をつきたいのをなんとかこらえながら彼女の後に続く。 そしてそのまま無言で研究所の入り口まで来た。 「はい、傷薬ね。これで仕事終わりだー」 入り口に立っていた白衣のお兄さんから傷薬を渡された。お兄さんは大きく伸びをしている。 「まだ日も高いし、早く行きましょ」 見れば彼女はもう研究所から数十メートル進んでいる。 「もう、遅いわね。何もたもたしてるのよ」 僕が走って追いつくと、彼女は苛立たしげに言ってきた。 「な、なんかさっきとテンション違わない?」 彼女の声質は先ほどのボソボソした陰気ものとはまったく異なり、大きく明るいものになっている。それに表情もどこか晴れやかだ。 「ああ、室内の蛍光灯の明かりじゃほとんど光合成出来ないんだもん。まあ鈍感な人間には十分みたいだけど」 なるほど、やはり草ポケモン、日差しが強いと活発になるらしい。 しかし、なんだか遠まわしに悪口を言われたような。 まあそんな些細なこと気にしていたら、これからのしばらくの彼女との二人旅を生きていけそうも無い。 「何ぼーっとしてるのよ、急いでよ」 「あ、歩くの早いよ」 僕は、短時間でかなり減少してしまった僅かな期待と、これからの莫大な不安を胸に、ポケモントレーナーとしての一歩を踏み出した。
https://w.atwiki.jp/kotye/pages/305.html
元ページ 飛ばされた先が壁の中などの移動不可地形 いしのなかにいる⇒全滅 か懐かしいな - 名無しさん 2012-08-03 15 19 01 ウィザードリィーか?昨年の据え置き機でエントリーされてたな - 名無しさん 2012-08-03 20 42 58 何だか、インパクトが薄いと感じるのは感覚が麻痺してれからかな? - 名無しさん 2012-08-03 20 44 31 すっかり調教されちまったようだな…俺も - 名無しさん 2012-08-05 11 34 58 ヌルゲーマー以外お断りとか逆に新しいな - 名無しさん 2012-08-05 23 14 33 ↑新しい地平を開きすぎだろ - 名無しさん 2012-08-06 04 39 55 ヌルゲーマー以外お断り斬新すぎるwどんだけ開拓民なんだ - 名無しさん 2012-08-06 15 59 59 酷いってレベルじゃなかった。爆散した。 - 名無しさん 2012-08-09 05 55 47 おいおい!ユーザーをデバッカーと勘違いしてねえかww - 名無しさん 2012-08-10 16 34 24 デバッガーな なんでカになるんだよ - 名無しさん 2012-08-13 11 36 41 デバッガーとバカをかけた自虐的かつ高度な・・・いやそれはないな ただバカなだけか - 名無しさん 2012-08-14 22 52 38 糞をひねり出すのも一苦労だな - 名無しさん 2012-08-15 23 06 46 DLで知らずに買ったぞどうしてくれる - 名無しさん 2012-08-17 16 12 14 パッチ当ててやれるだけやってみたエロシーン5個見れない 多分見れてないのスライム姫×1魔王×2路上のモンス×2 - 名無しさん 2012-08-21 02 15 10 このksg連発っぷりは何考えて作ってるんだろう - 名無しさん 2012-08-21 11 12 59 シンシアと何度も戦えるバグ修正って戦えなくなったんだが。シンシア二回目とミミックだけでないver.1.03 とりあえず+αの比率が高いほどクソになるメーカーだってことはわかった - 名無しさん 2012-08-22 17 01 38 ↑ミミック出たぜ?確認済み - 名無しさん 2012-08-23 20 02 03 なんか恒例行事っぽくなってるのが嫌だ - 名無しさん 2012-08-24 22 44 00 アンケートに答えようとしたら、送信するボタンが無かった - 名無しさん 2012-08-31 04 12 53 シンシア二回目以外埋めたもうやらない http //cdn.uploda.cc/img/img5040628ecc115.jpg - 名無しさん 2012-08-31 16 07 59 ミミック何処 - 名無しさん 2012-08-31 16 30 47 ↑ミミックは森で見た気がする・・・もしかしたら商業都市?のお方だったかもうろ覚えスマン - 名無しさん 2012-08-31 16 50 07 エロ直前でセーブしてあるの思い出して確認した ミミック商業都市の方だったスマン - 名無しさん 2012-08-31 19 12 45 ミミック出た場所 http //cdn.uploda.cc/img/img50409c677811e.jpg - 名無しさん 2012-08-31 20 14 11 キャラチップと一部マップチップがツクールのフリー素材じゃねえか - 名無しさん 2012-08-31 21 44 07 このメーカーはRPG要素入れないで欲しい - 名無しさん 2012-09-16 16 38 41 ↑体験版もやっていないが同意。RPGというか、ゲーム要素が無ければ、フルプライス・低価格共に普通に抜きゲーとして優秀な訳で(くのいち除く) - 名無しさん 2012-09-23 18 37 08 宝箱がオブジェでもミミックは出るの? - 名無しさん 2012-10-06 14 15 00 普通にエンカウントしたから関係ないと思う>ミミック ピエロのお面?だったかはステうp効果が無い事から推測するに多分女モンスとのエンカウント率うpじゃないかと思われ あと多分ある程度奥に進むか同じ都市でも出るエリア固定の可能性(全6マップの入口から5番目みたいなちなみにミミックは2万だったか金入ってた宝箱のマップだったかと) - 名無しさん 2012-10-10 23 06 57 これは・・・チートで固めて物理で殴れ、だな - 名無しさん 2013-01-08 01 20 55 なんでRPGってジャンルにこだわってるんだろう?RPGに対する思い入れも特には感じないし…単純に制作費が抑えやすいのかな - 名無しさん 2013-02-05 00 56 52 できないことはするなと言いたい - 名無しさん 2013-02-21 02 47 28 チートしないと気が付かないだろうけど、レベル99以降も上がり続け、ステータスが下がったりでまともなゲームでなかった。ねこまんまでEXPサーチして改造してプレイした。 - 名無しさん 2013-03-02 11 53 23 それはファミコン時代はそうだったでしょ、通常ではあり得ないシチュまで想定してないのは仕方ない - 名無しさん 2013-04-19 00 11 29
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2642.html
799 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 19 13 ID F.d9Ljgs [2/12] 強すぎる日差しと、塩の混じった波しぶきが私の肌を焼く。 手すりに寄りかかり、きらきらと光る海面を眺めながらため息を吐く。 彼が難しい話に夢中で、退屈だったから甲板に出てきたのに、失敗だったな。 ため息をつく私の眼下に広がるのは、どこまでも続く大海原。 ここは洋上。私は今、船の上にいる。 「もう、香草さん。日焼け止めも無しにこんなところにいたら、体調を悪くしちゃうよ」 物思いにふけっていると、後ろから声をかけられた。 私に尻尾がなくてよかった。 もしそんなものがあれば、恥も外聞もなくぶんぶんと振り回していただろうから。 「ごめんね、つい話が白熱しちゃって」 その言葉に、私は少し嫉妬してそっぽを向く。 私以外のものに、夢中にならないで。 「馬鹿にしないでよ。自己管理くらいちゃんとできるわ」 馬鹿。どうしてこういうとき悪態しか吐けないの? 素直になれない、自分の性格が心底嫌になる。 「君の健康を守ることは僕の仕事なんだから、ね」 そういってゴールドは私を抱き寄せる。 無意識に、顔が真っ赤に染まり、彼の顔を直視できなくなってしまう。 こうされたら、私が逆らえないのを知っているから彼はこうするのだ。 まったく、酷い男だ。 「ばか。ばーか」 私は照れ隠しに悪態をつきながら船内に戻る。 私達は、トレーナーとそのパートナーとなって世界を回っている。 ゴールドの夢でもない。私の夢でもない。私達、二人で作った夢。 シルバーのことがあって、ゴールドはすっかり生きる気力を失ってしまっていた。 私はそんなゴールドの隣にただ居ることしか出来なかった。 私が話しかけても、彼は暗い作り笑顔で答えるだけの毎日。 そんなある日、彼が言った。 「もう、ここで旅を終わりにしようと思うんだ」 心臓が一拍止まった。 「そ……それってどういうこと?」 私と一緒にいるのが嫌になったの? 旅を終えれば、私達はまた他人同士に戻ってしまう。ゴールドと離れ離れ。永遠に離れ離れ。 そんなのは、絶対に、嫌。 「私は! 私はどうなるのよ! 勝手に決めないでよ!」 違う。言いたいことはそんなことじゃないのに。私が、私が本当に伝えたいことは…… 「ごめん、でも、もう……。それに、これ以上君に迷惑は」 そこから先は聞きたくなかった。私は頭が真っ白になって 、そして気づいたら、ゴールドにキスをしていた。 私の口から吐息が漏れる。彼が呆気にとられた顔で私を見ている。 「私は……私は、ゴールドが、好き」 彼が息を飲むのが分かった。 「ゴールドとずっと一緒にいたいの。だから……終わりなんて言わないで! そばにいさせて! 迷惑なんかじゃない! 迷惑なんかじゃないからぁ!!」 涙と嗚咽交じりの必死の告白。お世辞にも綺麗なものじゃなかった。だけど、それが私の精一杯だった。 彼は少し間をおいた後、私の頬に手を這わせた。 そして、少し微笑んで言葉をつむぐ。 「僕はもう、旅をする理由を失ってしまった。身勝手だけど、もう僕は旅を続けられない」 ゴールドは笑いながら私の涙を拭う。 「でも、僕が君に迷惑をかけることを許してくれるのなら……二人で暮らそう。戦いなんてない世界で、二人で、平和に」 不覚にも、心が満たされる心地がした。 彼は、私と二人で、私だけいればいいといってくれたのだ。 私だけいれば、他になにもいらないと。彼はそういってくれたのだ。 それもいいと思った。それはとっても幸せなことだと。 ……だけど、私はそれを断った。 「何言ってるの! ゴールドはまだまだこれからなんだからね! だってゴールドはこの私が好きになった人なんだから、だから……ゴールドの人生は、これから始まるのよ!」 私は思ったのだ。ゴールドは、狭い世界しか知らず、偏見に凝り固まっていた私に本物の世界を見せてくれた。 同種以外何も価値を感じられなかった私を変えてしまった。 世界はこんなに素敵なものなんだと、私に教えてくれた! だから、思ったのだ。 今度は私の番だ。 だって変じゃない。 私に世界の広さを教えてくれたゴールドが、今度は自分から狭い世界に閉じこもろうとするだなんて。 だから今度は、私がゴールドを変えてみせる。ゴールドの支えになってみせる。 それに、私はゴールドが特別な人間であることを知っている。。 彼は今とても弱って、そのせいでこんなことを言っているだけだ。 彼は、世界に羽ばたく人間なのだ。 私がいるところは、広い世界で、皆の前で輝く、そんな彼の隣だから。 驚く彼に、今度は深い口付けを交わした。 そうして、私達はまた歩き出した。 今度は、二人で。 800 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 19 43 ID F.d9Ljgs [3/12] 本当に世界は広く、険しく、そして美しい。 負けそうな戦いもあった。眠れない夜もあった。それでも、隣に彼がいてくれたから、私はずっと幸せだった。 私は今、船室で彼と二人でいる。 そして、船内での供覧試合で傷ついた私の体を労わってくれていた。 彼の暖かい手が、私の全身を揉み解す。 そのせいで、私の中の熱は静まるどころかますます高ぶっていた。 「ねぇ、ゴールド……もっと」 高ぶっていたせいだろう。私は普段はとても口に出来ないことを、半ば朦朧として口走っていた。 「そうだね。けっこう攻撃をうけちゃったからね。ごめん、僕が未熟なせいで」 そういいながら、彼は私の肢体をより丹念に揉み解す。 私は彼の冷静な切り替えしに、急に恥ずかしくなってしまった。 「もう! 本当に鈍感なんだから! バカ! バーカ!!」 彼は困ったように頬を掻く。 「だって、ご両親へのご挨拶もまだなのにさ。こういうのはちゃんとしたいんだ。君が好きだから」 「ま、まだ早いわよそんなの! 何勘違いしてんのよ!」 ああ、顔が真っ赤に染まっていくのが分かる。彼には私の心なんてすべてお見通しなんだろう。 私が心の中でいっぱい慌てさせられてるのに、彼はいっつもにこにこしてるのだ。それが私は大好き。 ゴールドはこうやって本当に私をドキドキさせる。もう、彼のいない生活なんて想像できない。 そ、それにしても、私のお父さんとお母さんに挨拶なんて、それってけ、けけけ結婚のことよね? もう、ゴールドったら気が早すぎ! どれだけ私のこと好きなのよ! ホントに私のこと大好きなのね! わ、私と結婚なんて、どれだけ光栄なことか本当に分かってんでしょうね!? ず、頭が高いわ! ……でも、いずれは、ね? 彼は穏やかに微笑んでいる。 私の愛しい人。私のすべてを変えてくれた人。 ―――――――――――――――――――― 「やどりさん!」 それは、なんとも形容しがたい音だった。 乾いているとも、湿っているともいえる。破裂音の様でも打撃音の様でもある。 全身が総毛立つ。純然たる嫌悪。叫ばずにはいられないほどの恐怖。 生暖かいものが背後から降り注ぐ。 同時に、僕自身も落ちていく。 僕を抱くやどりさんの両の手から、急速に力が抜けていく。 重力に従って、あっという間に地面が近づく。 どうすることも出来ず、もがく間もなく。 僕は、柔らかな彼女を下敷きにして地面に落ちた。 思いのほかに乾いた音が聞こえた。同時に、鉄の匂いが辺りに立ち込める。 「や、やどり……さん?」 地面に投げ出された僕は、恐る恐る周囲を見回しながら、彼女の名前を呼ぶ。 怖くて、体が満足に動かない。 殆ど狂乱状態でさまよっていた僕の手が、力の抜けた彼女の手を、強く握り締める。 違う。 これじゃない。 確かに、これはやわらかく暖かい。 だけど、これはただの肉の塊だ。 違う。これは人の腕なんかじゃない。 「やどりさん! やどりさん!!」 お願いだから、返事をしてよ! 強く握り締めた肉の塊が、ビクリと一回跳ねた。 よかった! 無事だったんだ! 「やどりさん! 心配し……た…………」 起き上がり、振り返った僕の眼に入ったものは、頭の無い、肉の塊だった。 「う、うわああああああああああ!!」 う、嘘だ! 何だ、何だこれ!! あるべきところにあるべきものが無い。 それだけで、僕は目の前の物体が人間だとは、いや人間だったとは思えなかった。 頭部以外は、綺麗なままの肉体だ。 まだ熱もある。先ほどまで僕はそれに抱かれていた。 だけど僕はそれを受け入れることが出来なかった。 人が死ぬのを見るのは初めてでは無いというのに。 僕は半ば狂乱のままに這い、ソレから遠ざかる。 801 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 20 14 ID F.d9Ljgs [4/12] ―――――――――――――――――――――― 仕留めた! 石を放った直後。彼女は確かな手ごたえを感じた。 ゴールドを受け止めに行きたい。 彼女はそう思ったが、しかし視線をゴールドとは正反対の方向に向ける。 目線の先には、狂気に目を血走らせた、怪鳥染みた、童女と呼んでも差し支えがないような少女の姿がある。 彼女の渾身の攻撃を喰らったにも関わらず、ポポは平然と空にある。これは彼女が決して手加減をしたわけなどではない。 香草チコが放った攻撃は間違いなく以前のポポなら致命傷を負わすに足る攻撃だった。 しかし今のポポは、以前よりはるかに強くなっていたのだ。香草の想像も、やどりの想像も超えて。 香草チコの脳内は煮えたぎっていた。それはまさに狂乱する獣のような、感情の濁流そのもの。体系的な思考など微塵も存在しない。 だが彼女の行動は獣のそれと違い、機械のごとく極めて合理的なものだった。 例えば虫は複雑な神経回路を有さず、それゆえに高度な論理思考を行うことは不可能とされている。 しかし虫は、その神経回路の簡素さとは反対に極めて優れた戦闘行動を行う。純粋な戦闘に、高度な思考は不要だと主張せんばかりに。 今の香草の状態は、それとある種同一の状態であった。 彼女の焼け付いた、論理とはもはや無縁の脳は、それでも高い合理性でポポを見据える。 彼女らはやどりが絶命の刹那、自らの体を下に回し、ゴールドの安全を確保したのを確認した。 科学的には、外界からの刺激に対し、残った脊柱が成したただの反射行動である。しかし頭部を丸ごと喪失し、欠片の思考も持ち得ない彼女が、それでもまるでゴールドを庇うように動いたのは、まさに彼女の深い愛がなした奇跡と言っていいだろう。 だが、そんなことに彼女らは興味を示さない。 彼女らが意識するのは、自らの愛しい彼が無事であるということ。 そして、その自らの愛しいものを傷つける存在を一片の生存の可能性も無く完全に抹殺すること。 それのみである。 素早く自らに向き直ったチコを見て、ポポは内心舌打ちをする。 もしあのままチコがゴールドを助けに行けば。 いや、そこまででなくても、あとほんの少し長く、自分から意識が逸れたのなら。 彼女には、その一刹那の間にチコを絶命せしめ、そしてゴールドが地面に到達するより早く彼を救い出せる確信があった。 しかし実際は、香草チコはその一刹那の隙すら与えてはくれなかった。 ポポの目の前の生き物はどこまでも合理的で、しかしその相貌は合理性など微塵も感じさせない、歪な怪物へと変じつつあった。 ―――――――――――――――――――――― 前方では香草さんとポポの二人の攻撃が激突し、炸裂した空気の余波がこちらにまで及んでいる。 僕はその様子を見てわずかにだけど正気を取り戻す。 しかし正気を取り戻したところで、あの怪物たちに一体何が出来るというのか。 僕が出来るような小細工で何とかなるような段階はとうに超えている。 何をやったところで、濁流に石くれをひとつ投げ込むようなものにしかなりはしないだろう。 やどりさんに視線を這わせる。 まだ彼女の肉体は緩慢に痙攣を繰り返している。 しかし生死は確認するまでも無い。 美しかった彼女の、あまりにも痛ましい死。 今の僕には、彼女を弔ってあげることが出来るかどうかさえ不明だった。 ポポの薙ぐような低い翼の一撃を、香草さんは木に蔓を巻きつけ、手繰り寄せることで回避した。 森の中じゃ香草さんの方が有利だ。 香草さんは木々を利用してポポを撹乱できるし、ポポは飛行範囲も攻撃範囲も制限される。 速度で圧倒的に勝るポポを、ここでなら香草さんは完全に翻弄できる。 もちろん、ポポは勝つことが難しいというだけで負けが決まったというわけではない。 ポポはただ逃げればいいだけなのだ。それだけで香草さんには何も出来なくなる。 遅いやどりさんと違いポポなら先ほどのようなことも起こりえない。 しかしポポの中にその選択肢は存在し得ない。 彼女は狂気に満ち満ちているにもかかわらず、冷静さも失っていない。 だからこそ彼女は引き下がれない。 802 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 20 42 ID F.d9Ljgs [5/12] 彼女は十分に理解している。今、香草チコを逃がせば、もう生涯僕を見つけることが出来なくなるということに。 通常の手段では、この広い世界のどこかに逃亡したたった一人の人間を見つけることなど、ましてその相手が社会とのかかわりを完全に避けるというのなら、見つけることなど絶対に不可能だ。 今回、それがなされたのは、やどりの超能力と、他にも何か私には分かりえない細工があったのだろうと、そうポポは考える。 ポポにとっての敗北は香草チコに二度と再起不能なまでに叩きのめされることでも、まして殺されることでもない。 僕を失うこと。 それこそが彼女にとっての敗北である。 一度距離をとれば、木々に紛れてすぐに二人を見失う。そしたら、もう一度見つけられるかどうかは運頼り以外の何者でもなくなる。 だから、彼女に逃走という選択肢は絶対に存在しない。 彼女は必至に勝機を探す。 状況はすべて彼女にとって不利に働いている。 しかしだからといって僕が何か余計なことをし、現在の均衡が崩れれば……その先に待っているのは香草さんかポポ、どちらかの無残な死。 たったいまやどりさんを失ったばかりの僕に、そんな危険な選択はとても取れない。 僕は戦況を、ただ見守ることしか出来なかった。 ―――――――――――――――――――――― 先に状況を変えたのは香草だった。 十数の蔦で小石を拾い上げ、高速でポポ目掛けて弾丸のように射出する。 同時に、自身は数本の蔦で地面を打つと共に、周囲の木々に蔦を巻きつけ、弾かれるように飛んだ。 行き先はゴールドの倒れている地点。 彼女にとっての勝利条件はポポを殺すことなどではない。 ポポ同様、ゴールドを確保し、そして危険を排除することだ。 危険の排除の方法が殺傷か、それとも逃走かなど、考慮するまでもないほどに瑣末な問題に過ぎない。 理性を失っているように見える彼女は、しかし極めて合理的にゴールドの確保に動いた。 対するポポはわずかに出遅れた。 先ほどまで自分に向けられていた殺意は極めて強烈で、それは自分を殺戮することを第一に優先していると錯覚させるのに十分な強さであった。だから彼女にとって、香草が自分からの逃避行動を開始することなど、まるで思考の埒外にあった。 常識で考えれば、それが間違いなく真実だろう。しかし今回はそれは通用しなかった。相手は理性ある人でも、理性を失った獣でもない。彼女が今まで相対したことの無いモノなのだ。ポポは最初から、香草を正確に測るものさしを持ち合わせていなかった。そして彼女は今この瞬間の失敗をもって、初めてその事実に気づいた。 冷静であったがための油断。そしてその油断がこの失態を招いた。 彼女は頭の中で刹那のあいだ短い罵倒と呪詛を吐き、そしてそれが終わらぬうちに急降下体勢に入る。 小石を避けるだけの猶予は無い。しかし弾丸にも匹敵するそれを正面から受け、傷を負うのは今後の戦闘行為において致命的であることを意味した。 しかし、今を逃せば私は全てを失う。戦う意味も、いや、生きる意味すらも。ここで引いても死ぬことになるというのならば……! その恐怖が、彼女の神経を極限までに研ぎ澄まさせた。 音速に迫る体で、瞬時に殆どの小石を識別する。そして彼女の追う損傷の程度が戦闘行動に大きな影響が出ない航路を刹那で見極め、そのまま急降下した。 いくつかの小石は彼女の周囲をすり抜け、そして残る数発の小石が彼女の羽毛を打ち、筋肉と神経に打撃を加えながら砕け、そして二発の小石が彼女の薄い皮膚を抉った。 彼女は着弾と出血の事実を知覚する。しかし痛覚も恐怖も無かった。 もちろん、傷は浅くは無い。平時であれば激痛に顔を歪め、苦悶の声を漏らし、攻撃行動にも支障をきたすのだろうが、彼女は彼女の脳内に多量に分泌されている脳内物質のお陰で、怪我を知覚しながらも苦痛などの要素を排し、殆どパフォーマンスを落とさないことに成功した。 その速度のまま、彼女は香草の首を掻き斬らんと翼を広げる。 その刹那、彼女の全身に衝撃が走る。 803 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 21 09 ID F.d9Ljgs [6/12] ポポの全身には緑の刃が生えていた。 刃と呼んで差し支えのないほどに研ぎ澄まされた無数の葉が彼女に突き刺さったのだ。 ここは下草の生い茂る森。 そんな場所で、地面へ急降下しながら、同時に自分に向かってくる飛来物を認識しつつ、さらにその下草の色と似た暗器の存在まで知覚することなど不可能であった。 香草の口が歪み、笑顔を作る。 狡猾な策だった。まるで狂乱している生物が、激しい戦闘の最中に思いつくことの出来るような策ではない。 いや、狂乱していなくとも、通常の精神状態でこれを成しうる生き物は存在しないだろう。絶え間ない訓練の末に、精神と無関係に戦闘行動を行うことができるほどに研ぎ澄まされた兵か、あるいは、ただただ狂気に身をゆだねるものだけが到達しうる領域。 しかし狂気に身をゆだねているものはこの場に一人ではなかった。 ポポの口がぐにゃりと歪んだ。 なんだ、この程度か。 そう嘲笑するように。 ポポの有す武器は速度のみである。翼に鋭い爪があるわけでも、刃がついているわけでもない。 しかし、そこに香草は鋭利な刃物を生やしてくれたのだ。 彼女の羽は元来、自然物に強い。 木々生い茂る森の中を棲家にするのだから当然のことである。 自然界にはそこここに肉体を傷つけるような植物が存在する。 彼女は種としてそれらに適応してきた。種として強いわけである。 いかに研ぎ澄まされようと、例外はない。 香草の放った刃は、ポポの表面を切り裂いたのみで、殆どは風圧に押し付けられる形で刺さっているように見えているだけに過ぎない。 もちろん、それによって速度は落ちた。速度が落ちれば当然破壊力も低下する。 ポポはその速度の低下を、体を捻ることによって改善した。 彼女のやわらかくしなやかな体がまるでムチのように捻られ、打ち付けられる翼の先端の速度は音の速さを優に凌駕した。 ただまっすぐ飛行する際に音速を突破することとはわけが違う。 平素であれば何のこともない動作も、速度が増すに比例して筋繊維や骨格にかかる負担は跳ね上がる。無論、衝撃を逃し損ねれば低速とは比べ物にならない負荷が肉体を襲うだろう。ほんの数ミリの体軸のずれが、全身の筋をばらばらに裂くことになるほどの複雑な動作を彼女は音速で行っているのだ。 それほどまでに、彼女は完璧に肉体を制御していた。 音の壁を突き破る衝撃波と共に、植物の刃が生えたポポの翼が香草に振り下ろされる。 香草が放った植物の刃は諸刃。つまりポポに刺さった刃の反対は香草のほうを向いていた。 ポポは、それを香草につきたてようというのだ。 しかしいくら浅いとは言え、自らに刺さった刃物をそのまま相手に押し付ければ、相手だけでなく自分にもさらにその刃を深く差し込むこととなる。 正気では行おうと思うものはいないだろう。 しかし彼女からもとうに正気などという、この場においてはなんの有用性もない愚物は保持されていなかった。 だからこそ、彼女にはそれが成しえた。 トゲを持つ植物が自らのトゲによって傷つけられることがないように、本来ならば香草の皮膚を植物の刃は裂きはしない。 しかし、それが音速を越えて振り下ろされるとあらば話は別だ。 香草はその音速の刃に切り裂かれ、後方に飛ばされる。 が、彼女もただ攻撃を受けたわけではない。 空気中に放たれた、光を反射して輝く微粒子。 ポポがそれを認識したときには、すでにそれはいくらかポポの肺の中に取り込まれていた。 強力な沈静作用と催眠作用を持つその粉は、ポポから容赦なく急激に意識を奪っていく。 空中に逃げようとするが、コントロールを失った彼女はもがくように地面と木々にぶつかりながら後退する。 これを好機と見て香草は追撃の蔓を伸ばすが、ポポはすぐに地面を蹴り、宙に舞った。 凶悪なまでに強い睡眠薬に、彼女の痛みと精神が打ち勝ったのだ。 本来、強力な睡眠薬の効果はどんな苦痛や精神を持ってしても抗いがたい、強制的に脳神経を停止させる毒のようなものである。 毒といえば、それに対し意志の力で打ち勝つことがどれほど馬鹿げたことかは明白である。 804 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 21 34 ID F.d9Ljgs [7/12] しかしその馬鹿げたことは現に起きた。 現象があるのだから、それがどれほど荒唐無稽であろうと否定することは不可能である。 それが起こってしまったのは、陳腐な言い方をすれば狂愛が毒に打ち勝った。常識で考えれば、激しい戦闘中において、相手を昏倒させるほどの眠り粉を摂取させることに失敗したのだろうという推測が成せるのみである。 宙に舞ったポポは、しかしはっきりとした冷徹な目で香草を凝視した。 対する香草の表情はもはやようとしてしれない。嗤っているようにも、激怒しているようにも見え、それはもはやまともな生物の表情ではない、狂相そのものもだった。 驚愕するべきは、これほどの手数のやり取りが、わずか数秒の間に交わされたものだということだ。 ほんの数秒前にはほぼ無傷であった両者が、今は全身に打撲痕と無数の切り傷、そして流血に塗れている。 怪我の程度はポポのほうが重かった。 この怪我の差は、そのまま一瞬間の油断の差、それが齎したポポへの罰といえよう。 先ほどの小競り合いとは打って変わって繰り広げられた高速戦闘。 それは膠着を打破し、お互いを撃滅せんとする殺意の嵐そのものだった。 吹き荒れる嵐の果てに、深手を負ったポポは焦りを覚える。 このまま正面からぶつかっても、もはや負ける可能性の方が高い。 幸い、ここしばらくのゴールドとの蜜月の間に、この周囲の地形は殆ど把握している。入られたら最後、追跡が不可能となるような洞窟や抜け穴の類は無いはずだ。 また、このようなフィールドはポポにとって機動力を活かしきれない場でもあるが、しかし本来であれば彼女の生活の場、狩りの場でもある。この地は彼女にとって不利なだけの場ではない。 獲物が森に紛れようと、彼女が獲物を見失う可能性は低い。 ましてゴールドには自分の匂いがたっぷりと染み付いている。 追跡できないわけがない。 持久戦、という言葉がポポの脳裏を掠める。 ゴールドの確保という点においては、そもそも香草の方が不利なのだ。 彼女は飛べず、また木々に蔦を巻きつけ、手繰り寄せることで瞬間的にはある程度の速度を出すことはできるが、それも空を翔るポポにとっては大した速さではない。 一方のポポは、ゴールドを捕まえ、一度宙に浮かびさえすればもはや何者にも決して追いつかれることはないだろう。 さらに超能力でこちらを探知するやどりは死んだ。 とすれば香草ひとりで、逃走するポポに何が出来よう。 ゴールドを確保し次第、逃げる。 屈辱的だが、その選択が最善に思えた。 しかし果たしてそれは可能なのだろうか。 この傷、出血は決して軽くはない。これ以上の時間をかけることは、彼女にやや不利と現実が告げている。 元々体重の軽い彼女、血液の量は決して多くはない。 これほどまでに神経が高ぶっていなければ、思考判断力が低下するに十分な量の血がすでに彼女の体内から流れ出ていた。 さらに、彼女にとって、ゴールドが錯乱して見えることも懸念の材料だった。 ゴールドの精神はある程度真っ当なものであったが、彼女にとっては、ゴールドが彼女を拒む時点で狂気の沙汰なのだ。 狂人にとっては、正気の人間こそ狂気に映るものだ。 結局、彼女は消極的な策として、香草を少しずつ削ることを選んだ。 そもそも彼女は狩る側だ。攻撃者と防衛者の関係において、どちらも同条件であれば攻撃者は絶対優位である。守る側は守るタイミングを選ぶことは不可能であり、行動の自由に絶対的な制限がある。一方、攻撃者にそれらの制限は皆無だ。攻めたいときに自由に攻めることが出来る。防衛者は常に襲撃者に神経を張り詰めざるを得ない。それによる消耗は隙を生み、そして隙は敗北を生む。 私の体力が尽きるのが先か、香草の精神力が尽きるのが先か。 分のいい賭けには思えなかった。 しかし、今は他に選択肢が無い。 そうして、持久戦の覚悟を決めたポポは、次の香草の一手で息を飲んだ。 香草の全身にが、燐光に包まれる。 そしてその燐光が、束ねられた蔦の先、その一点へと収束している。 蔦の先端の輝きは見る見る増し、周囲から光を奪っていると錯覚するまでになる。 ポポは驚愕する。 あれは太陽の光。彼女は、蔦の先に極小の太陽を作り出し、それを打ち出そうとしているのか。 しかし次の瞬間のポポの顔に浮かんだのは、驚愕ではなく歓喜の表情。 笑わせる。この私を目の前にして、そんなものなど。 805 名前:ぽけもん黒 最終話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 20 21 55 ID F.d9Ljgs [8/12] そしてポポの体も陽光に包まれる。 そう、ポポも持っていたのだ。 一撃で確実に相手を絶命せしめる、必殺の一矢を。 その絶大な破壊力ゆえに、『ゴッドバード』の名を冠され、畏怖された、壮絶な一撃を。 ポポはむしろ好都合に思えた。 相手は一撃へと賭けに出た。しかし自分のほうがより強い一撃を持っている。 この勝負、私の勝ちだ! その時点では、両者に慢心があった。 しかし互いに、互いの業の輝きを目にし、そして双方、ほぼ同時に悟る。 目の前の敵は、今まで戦ったことのある敵の中で最も強い相手である。 そして自分達の持つ技の数々は、その強敵を抹殺するのには十分ではない。 もはや、自分達は、「一点」を除いて相手を絶命せしめることが不可能である、と。 だから、その一撃は双方の命をかけた最後の一撃となり、そしてそれは正面から、自らの全てをぶつける大技となった。 回避すらここに到っては愚策だった。 回避などを頭においていては、攻撃の威力が減算する。それでは殺しきれないかもしれない。打ちもらすかもしれない。 それに、双方共に、一切の打ちもらし無く、一撃で相手を確実に殺しきる。心からのその確信があった。 双方、互いの業の破壊力を高めることに集中する。 その結果、この激しい闘争のさなかにおいて、唐突に静寂が訪れた。 周囲の木々が恐怖で呼吸を止めるような、大気が怯えてこの場から消え去ったかのような、凄惨なまでの静寂。 しかし、その静寂も幾許も続かなかった。 周囲の木々が恐怖のあまり発狂するより早く、二人はほぼ同時に業の予備行動を終え、最大の威力まで高められた二人の業が発動する。 まばゆいまでの光に包まれたポポが怪鳥染みた奇声をもって急降下を開始し、その中心目掛けて香草の光線は放たれた。 勝った! 殺した! 互いにそれを確信した。 彼女達の計算に、誤りは無いはずであった。 ただ一点。彼女達の犯したミス。 それはゴールドの存在を、自らの愛しい人の介入を考慮にいれていなかったことにある。 「二人とも、もうやめてくれ!」 彼女達が知覚したときには、すでにゴールドは目の前にいた。 互いに、渾身の力を持って相手を撃滅せんとしたばかりに、周囲への注意がおろそかとなった。 しかし誰が予想しうるだろうか。 岩を砕き、鉄を裂くような攻撃に、傍目から見ても想像がつくような破壊の権化の只中に、自ら飛び込む人間がいようなどと。 結果。すべては手遅れとなってしまった。 一度放たれた銃弾が再び銃口に戻ることがないように、もはやすべてが手遅れであった。 「やめろー!!」 ゴールドはすべてが手遅れであることを内心悟りつつ、それでも二人を助けるために、二つのエネルギーがぶつかる、その光の中へと飛び込んだ。
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/2420.html
【くるーじんぐ!1】 ムギ「おもかじいっぱ~い♪」 ミオ「流石ムギだな、船の操縦までできるなんてすごいな~」 ムギ「小さい頃から船にはよく乗ってたから♪帆さえ張ってしまってこの位の風なら操縦は簡単なのよ~」 ~♪ (鼻歌) ミオ「おっ!?ブランキーなんか知ってるのか、ムギ!」 ムギ「ウフフッ、こないだりっちゃんと遊んだ時に『ムギはこんなん聞かないだろ~』って貸してくれたの♪」 ミオ「そっか~いい歌だよな、水色」 ムギ「うん!私すごぉ~く気に入っちゃったの~♪」 ~♪ (鼻歌) ミオ「・・・」 ミオ「・・・」 ミオ「・・・なぁ、ムギ」 ムギ「なぁ~に、澪ちゃん?」ニコッ ミオ「・・おまえ、その~・・・最近悩んでるんじゃないのか?」 ムギ「えっ?」 ミオ「ほら、最近学校でもお前うかない顔してるし、特に・・・ここに着てからの戦闘でも・・」 ミオ「・・・なんか溜まったストレスを発散するみたいな風にみえるし・・・(まぁ、過度の百合は毎度の事だけど・・・)」 ミオ「それにお前は周りに気を使いすぎて、あんまり自分の悩みを外に出さないだろ?」 ムギ「・・・」 ミオ「なにかあったんじゃないのか?ムギ」 ムギ「・・・」 【夕暮れくるーじんぐ!2】 ミオ「良ければ話聞くぞ、ムギ?」 ムギ「・・・」 ムギ「・・・特別、何かあったってわけじゃないの。気を使ってくれてありがとう、澪ちゃん」 ムギ「・・・」 ムギ「・・・」 ムギ 「あのね・・もう昔から決まってたんだけど、私の家の跡取りは私になるの。お父様は養子を迎える気は全然なくて。・・・だから小さい頃から、琴吹家の帝王学を学んできたの。」 ムギ「小、中学校は政治家や一流企業の子しか通えない学校でね・・・学校が終わると、どこかの企業を買収し分別して高く売れる部署は天秤にかけて売ryそういう方法や経済学、金融学をずっと学ばされてきたの」 ムギ「そんな毎日だったから友達らしい友達なんて今まで一人もいなかったし、学校以外で同級生に会うなんて企業関連の社交パーティー位だったの」 ムギ「私はそんな生活が嫌で嫌でたまらなくなって、高校だけは普通の女の子が通う学校に行きたい、ってお父様に初めてお願いをしたの。」 ムキ「そうしたらひどく失望させたようで二言も言わせないような態度で頑なに拒否されたし、徹底的に罵倒されたわ」 ムギ「それから私は何度も何度もお願いしたんだけど・・・やっと認めてもらえたのは・・・その・・・私が・・・私が自殺をしようとしたからなの・・ううん、今はそんな事は全然考えてないからね!!大丈夫だから!」 ムギ「それで条件付だったけど、3年だけ、3年だけお前の好きなようにしなさいって言ってくれたの」 ムギ「私、春から私立の女子大に通うって言ってたでしょ?そこの理事を勤めているのはお父様でね・・・」 ムギ「・・・」 ミオ「・・・」 ムギ「・・・ウフフッ♪よくよく考えれば桜ヶ丘高校での生活は本来の私の人生には有り得ない事ばかりだったわ~」ニコニコッ ムギ「皆とバンドを組んでライブをしたり、放課後にお茶を飲んだり、バイトしたり、合宿でBBQしたり、他所のお家にお邪魔してお泊り会、学校帰りのアイスクリーム♪・・・あっ、ごめんなさいね。私はいつも小さい事なのに夢だ、夢だ、なんて言ったりして・・」 ムギ「みんなと一緒にいるのが楽しくて楽しくて本当に楽しくて・・卒業して今みたいに皆でワイワイする事がなくなってしまうのが・・・私、不安で、怖くて、最近・・おかしくなってたんだと思う・・」 ムギ「・・皆には本当に感謝してもしきれない位、感謝してるの!」ニコニコッ ムギ「今回もこうやってみんなでゲームをするのも本当に私の夢だったのよ♪」 ミオ「・・・」 ムギ 「いつも一緒に居てくれて、仲良くしてくれて本当にありがとう!」ニコッ ミオ「・・・」 ムギ「ごめんね、つまらない話をしてしまって・・・でも、なんだかスッキリしたわ!ありがとう、澪ちゃん!」ニコッ ミオ「・・・」 ムギが無理して作った笑顔を見るのが痛々しかった。 ムギの傍に約3年も居たのに、何もムギの事を知らなかった自分に腹が立った。 ムギがいつも淹れてくれる紅茶のティーポットの中に何があるかなんて考えてもみなかった。 今ムギが不安定で、私がムギの最近おかしい様子に気が付かなかったら、ムギは絶対にポットの中身を見せたりはしなかったのだろう。 【夕暮れくるーじんぐ!3】 いつの日にか みんなどこかへ 消えてしまいそうな気がする 伝えなくちゃ 素直なその気持ちを 今すぐに 【夕暮れくるーじんぐ!4】 場の雰囲気をまぎらわすためか、さっきの鼻歌の続きで口ずさんだのか・・・ なぜ、ムギが今『水色』のそこの歌詞を口ずさんだのかはわからなかったのだけど・・・ 潮風に吹かれてなびくブロンドの長い髪は夕日に照らされて、こんなに眩しいのに・・・ ムギの淋しそうな笑顔は一枚の写真のように私の心にずっと残るんだろう ムギ「・・・澪ちゃん?・・・」 ミオ「・・・」 ムギ「・・・本当にごめんなさい!なんかしんみりさせちゃry」 ダキッ! ムギ「澪ちゃん?!!どうしry」アタフタ ミオ「ムギ、ごめん!・・・何もお前の事を知らなくて・・・」 ムギ「私こそ変な話をしてごめんry」 ミオ「みんなどこにも行かないし、消えたりなんかしない」ギュッ ムギ「澪ちゃん・・・」 ミオ「ムギ、つらい時はいつでも私たちを頼ってくれ」ギュッ ムギ「・・・」 ミオ「おまえがどこかの有名企業のお嬢様でも、どこかの王国のお姫様だろうが全く関係ないじゃないか!」ギュッ ムギ「・・・」 ミオ「おまえは、私たちの大切な大切な友達の『ムギ』なんだ!」ギュッ ムギ「・・・」 ムギ「・・・」 ムギ「・・・」ポロッ 【夕暮れくるーじんぐ!5】 ミオ「おまえを一人にはしないよ、ムギ」ギュッ ムギ「・・・」ポロポロッ ミオ「おまえは一人じゃないんだ、ムギ」ギュッ ムギ「・・・ヒック」ポロポロッ ミオ「みんな、ムギのことが大好きだからな。・・・それと・・・いつも本当にありがとう!ムギ」ギュッ ムギ「・ヒック・・ミオチャ・ヒック・アリガ・・ヒック・アリガt・フェ・・フェェ~ン!!」ポロポロポロッ ミオ「・・・よしよし、ムギはいい子だから大丈夫、大丈夫」ナデナデ リツ(チェッ、澪の奴にいいとこもってかれたなぁ~) 【月夜のくるーじんぐ1!】 ユイ「あぁぁーっ!!ムギちゃんが目腫らしてる~さては、りっちゃん!!?」ギロッ リツ「ぉおい!!なんで真っ先に私を疑うんだよッ!!!」 アズサ「ムギ先輩を泣かせるなんて、律先輩最低ですっ!!」フンス リツ「梓まで!!誤解だよ、誤解っ!」 ユイ「ひどいね~大丈夫、ムギちゃん??今度いじめられたらすぐに言ってね?」ダキッ ナデナデ ムギ「ウフフッ、今度からそうさせてもらうわ~♪」ギュッ リツ「なにぃぃ~ムギまで?!おい~っ澪、澪!何とか言ってやってくれ!」アタフタ ミオ「フフッ、律は昔からいじめっ子だもんな~」ニヤッ リツ(・・なん・だ・・と・・?!) ムギ「冗談よ♪ただ潮風にあたり過ぎてちょっと腫れちゃったみたいなの」ニコッ アズサ「本当ですか~?今ならサメの餌にするのに絶好の場所ですよッ!!」フーッ リツ「サラッと怖い事言うな、梓!!・・・それと~・・ムギ、ちょっとこっちに来てもらっていいか?」 ムギ「はいはいは~い♪」ニコニコッ ユイ「ムギちゃ~ん、いじめられたらすぐに助けをもとめるんだよ~!」ブンブンブンッ リツ「こんな状況でいじめなんかするかっつーの!!」 【月夜のくるーじんぐ2!】 ムギ「なぁ~に?りっちゃん♪」ニコッ リツ(面と向かうと言いづらいなぁ・・・ぇええーいっ!!!) リツ「なんだ、え~っと、その・・・すまんっ!!!聞くつもりは無かったんだけど・・・さっきの話、全部聞いてしまいマシタ・・」オソルオソル リツ「それで~えっと、なんだっけ・・・まぁ、澪が言ったようにだな・・・私たちが何も力になれる事はなくてもムギが困った事や、つらい事があったらry」 ムギ「りっちゃんは正直者で本当に優しいのね~♪澪ちゃんが惚れてしまうのもよく理解できるわ~」ニコニコッ リツ「なっ?!ryって今はそんな話じゃなくて!!・・・その~・・困った事や、つらい事があっry」アタ 【月夜のくるーじんぐ3!】 チュッ 【月夜のくるーじんぐ4!】 ユイ&アズサ「あぁぁーっ!!!!」バッ! リツ「わぁぁぁ!!??ムギryフジryコr!!」カァァァー ムギ「ウフフッ♪」ニコニコ ユイ「ムギちゃんが~りっちゃんのほっぺにチューしたよぉぉぉ!!!!」ワァァァー リツ「むgiryお前、何考えry!!?っていうか、なんでお前らここにいるんだっー!!!」 アズサ「mugisenpairydouiukotory??!!」プッシュー ポンッ シュワシュワシュワ ポンッ リツ「ぁあ~梓ッ!!いかん、梓がまたオーバーヒートしてしまった!!おい、みおーっ!!澪っー!助けてくれ~!!ミオ~!!」 ユイ「みおちゃ~んっ!!ムギちゃんが~りっちゃんのほっぺにチューしたよぉぉぉ!!!!」ワァァァー ムギ「ウフフッ♪」ニコニコ ギャーギャー ミオー ワイワイ ミオー ザワザワ ミオー ミオ「フフッ」ニコッ 夜の海を進む船に今日の風は優しく吹いているようです 唯「ふぁいなるふぁんたじー?」 【一章 完】 待って下さい 今ほんとに続きを書きだしたばかりなので今日は投下できませんですよ、すいません 遅筆なので最速でも来週になってしまうと思います 書けたらまたスレ立てるかこのスレが残ってればここに投下します 後、何かリクエストがあれば教えて欲しいです 百合絡みは無しで行きたいので、それ以外であればお願いします 戻る
https://w.atwiki.jp/alfan/pages/18.html
ヤガミと絶望~小笠原ゲームログ(10/15) <あらすじ> 舞踏子に振られ、自殺したヤガミ。奇跡の治療で復活させるも、彼は未だ自分の死を望んでいた。 復活後の自殺を止めることには成功したが、ヤガミは記憶を壊す副作用のある、自殺を止める薬を定期投与されることになった。 <鍋@ふぁん小笠原ゲーム歴> ①鍋の国の慰安(にならなかった)旅行 (鍋の国で行った3時間旅行) ②鍋ヤガミ復活~小笠原ログ(9/18) (奇跡の治療後、ヤガミの自殺を止める) ヤガミ⇒鍋@ふぁん評価 : 友情-1 / 愛情+2 中の人 >鍋@ふぁんさん、こんにちは *鍋@ふぁん> どきどき。入室しておきます 中の人 >芝村さん、こんにちは *鍋@ふぁん> こんばんは。よろしくお願いします。 *芝村> こんばんはお願いします*鍋@ふぁん> ヤ、ヤガミは今どんな感じなのでしょう?(どきどき)イベントを迷っています。 *芝村> 今の状況は、かなり安定してるが、時間が空きすぎた。*芝村> 廃人だよ。 *鍋@ふぁん> 一ヶ月で廃人ですか@@うう、自分的には急いだんですが遅かったですか・・・・。 *鍋@ふぁん> 夜明けの船でも寝たきりとかなのでしょうか? *芝村> ま、頭壊れてるだけだ。死んではいない。 *芝村> これ以上の薬の使用は命にかかわる。だから薬はもう使えない。そんな状況だ。*鍋@ふぁん> な、なんとーーー。ヤガミ・・・ごめん。 夜明けの船で会おうかと思っていたのですが、小笠原の風に当てたほうが気分がよくなりそうですかね。 *芝村> イベントはどうする?*鍋@ふぁん> ごはんを持ってきたので、お昼時が良いので、お昼休みでお願いします。 *鍋@ふぁん> どこか風が気持ちよくて、安全な場所で。 *芝村> 崖の上があるよ*鍋@ふぁん> 言われる気がしました!!崖は安全じゃないですーーーーーー *芝村> 砂浜 *鍋@ふぁん> 入水が心配なので(心配性)どこか、公園とかありませんか? *鍋@ふぁん> (好き放題言ってすみません) *芝村> ミーアの泉公園があるよ*鍋@ふぁん> ミーア?が何かわからないのですが、落ち着いた場所でしたらそちらで *芝村> OK *芝村> では2分ほどお待ちください *鍋@ふぁん> はい。 *芝村> /*/ *芝村> こんこんと湧き出す泉の近くに、貴方は車椅子を押してきた。*鍋@ふぁん> そっとヤガミをみつめて様子を見ます。 *芝村> ヤガミは、動きがない。人形のようだ。*鍋@ふぁん> 「いい天気でよかった。風が気持ちいいね」(ヤガミを見つめて、微笑みながらはなしかけます) *芝村> ヤガミは動かない。その瞳は、木と泉を映している。*鍋@ふぁん> 「泉がある。きれいな水・・・。もっと近づいてみようか?木漏れ日も気持ちがいいね。」(やはり微笑んで話しかけます) *芝村> ヤガミは反応がない。*鍋@ふぁん> 「・・・・ヤガミ。来るのが遅くなっちゃってごめん。ごめんね。」(耐え切れなくなってぎゅーします。) *鍋@ふぁん> 「 *芝村> ヤガミの体がガクガク震えだした。*鍋@ふぁん> 力強くぎゅーします。 *芝村> 攻略本が震えている。 *芝村> 10 *芝村> 9 *芝村> 8 *芝村> 7 *鍋@ふぁん> さらにぎゅーーーー *鍋@ふぁん> 攻略本はなんとーーーー *鍋@ふぁん> 「ヤガミ大好きだよ。大好きだよ!!」 *芝村> ここで抱きしめるとヤガミは死にます。 *芝村> 攻略本は壊れた。*鍋@ふぁん> ぎゅーを取り消します *芝村> もう、おそい。 *芝村> だがふぁんの必死の声は、ある程度の力は発揮されたようだった。*鍋@ふぁん> 「ヤガミ大丈夫。ごめん。ごめんね。」(ヤガミから離れます)*芝村> ヤガミの目が、動いている *鍋@ふぁん> (ヤガミの目を見つめます) *芝村> ヤガミから離れると。*鍋@ふぁん> 「ヤガミ、大丈夫?ごめん、遅れてきたくせに、ヤガミの気持ちわかってあげられなくて。好きなのに。こんなに好きなのに。」*芝村> 攻略本。またつかってもいいよ *鍋@ふぁん> 今、一冊消費したのでしょうか? *芝村> ええ。>消費*鍋@ふぁん> あう・・・ミサさんがお許ししてくださいました。も一冊使わせていただきます>国のみんな使いまくってごめん!! *芝村> 使いました。*芝村> 現在自殺防止用に、脳と体の機能を、切り離してるらしいね。*鍋@ふぁん> ???体は自由に動かないということでしょうか? *芝村> ええ。今ヤガミは、体が自由に動かない。*鍋@ふぁん> ぎゅーすることで、体が自由に動くようになって、自殺しようとしたのでしょうか? *芝村> 攻略本にはそこまで書いてないね。さて、どうしよう。*鍋@ふぁん> ヤガミは話すこともできないのでしょうか?瞳の様子から感情を読み取ることは可能ですか? *芝村> 話せもしないね。舌噛むから。 *芝村> 瞳を見ることは出来る。*鍋@ふぁん> 瞳を見ます。どんな様子でしょう? *芝村> 意思はありそうだね。 *芝村> 悲しくはありそうだが。それがなぜかは分からない*鍋@ふぁん> 「ヤガミさっきは急に抱きついてごめん。驚かせちゃったね。ヤガミに会えて嬉しくて・・・切なくて・・・。気を取り直して、泉のほうにいってみようか?」(瞳を見ながら話しかけます) *芝村> ヤガミは何か言いたそうにも見る。*芝村> じゃあなぜ、1ヶ月こなかったのかと、そう言ってる気もする。 *鍋@ふぁん> (瞳の意思を読みつつ)「遅くなってごめん。一ヶ月もかかっちゃったけど、これが私の最速だったの。ごめん。のろまでごめん!!」 *鍋@ふぁん> (リアルで今日が最速ですよーーー@@) *鍋@ふぁん> 「もっと早くこれたらよかったのに。私もヤガミに会いたかったのに・・・!!」 *芝村> ヤガミは答えない。*鍋@ふぁん> 「ヤガミは私のこと、待っててくれたんだね。ありがとう。早くにこられなくて、ごめん。ごめんね。」(瞳をしっかり見て、誠意を持って話しかけます) *芝村> ”だれかとおなじだ”*鍋@ふぁん> 「ううん、私は誰とも同じじゃないよ。私は私。今回自分の気持ちを行動で示せなかったのは私のせい。」 *鍋@ふぁん> 「でも待って。待って。私、私、ヤガミが好きで。今目の前にいるヤガミだけが大事で、その気持ちだけは誰にも負けない。比べないで。」 *芝村> ヤガミからは、反応がない。 *芝村> もう駄目かもしれないね。ヤガミは目を伏せた。*鍋@ふぁん> 「誰と比べられようと、私はヤガミを一番大事に想ってる。何度でも言う。好きだよ。大好きだよ。」(目をまっすぐ見つめて言います)*鍋@ふぁん> 攻略本は何か言ってますか@@*芝村> 攻略本にはなにもない。 *鍋@ふぁん> (ヤガミの伏せた目を下から覗いて、想いを込めて見つめます) *芝村> 見詰めている。 *芝村> 10 *芝村> 9*鍋@ふぁん> 「ヤガミ、私会い来る。なんどでも。私の精一杯で。」 *芝村> 5 *芝村> 4 *芝村> 3 *芝村> 2 *芝村> 1*鍋@ふぁん> 「今回精一杯が足りなかったなら、次はもっと頑張る。約束。」 *鍋@ふぁん> ヤガミの手を握ります *芝村> ヤガミの手は冷たい。 *芝村> 0 *鍋@ふぁん> ヤガミの手をさすってあたためます。 *鍋@ふぁん> 手を自分の頬に当てます *芝村> ヤガミの目が何か語っているのに気付いた。*鍋@ふぁん> (じっと瞳を見て、それを読み取ります) *芝村> ヤガミの目は、爆笑している、なにかがおかしくておかしくて仕方がないように。*鍋@ふぁん> !?(笑ってくれるのは嬉しいけど、一体!?) *鍋@ふぁん> さらに瞳の奥を読み取ろうとします *芝村> 絶望して、もうどうでもいいやと思ってる気がする。*鍋@ふぁん> 「待って。ヤガミ。お願いチャンスをちょうだい。」 *鍋@ふぁん> 「私、口ばっかりで、何の力もないけど、想いだけは本物だから。」 *芝村> ヤガミは身体を動かせという目で、貴方を見ている。*鍋@ふぁん> それはヤガミの体でしょうか?どう動かしたいのでしょう? *鍋@ふぁん> (私に行動で示せという意味でしょうか?) *芝村> スイッチがあるのかもしれないね。ヤガミの体のどこかを動かす*鍋@ふぁん> 攻略本は何か言ってませんか?(心配) *鍋@ふぁん> ヤガミが何で体を動かしたいのか、瞳をじっと見つめます *芝村> ヤガミは動かしても死ぬことはありませんとある>攻略本 *鍋@ふぁん> 自殺もしないということでしょうか?>攻略本(心配性) *芝村> ええ。自殺はない。*鍋@ふぁん> ヤガミを信じて、ヤガミの意思を尊重したいです。もしヤガミが不穏な動きに出たら全力でとめます。自分に何かされてもいい。 *芝村> OK.*鍋@ふぁん> スイッチを探します。ヤガミを信じて、覚悟を決めて(スイッチを探しつつもヤガミを見つめます) *芝村> 貴方は神経の接続を回復させた。 *芝村>ヤガミ:「……」*芝村>ヤガミ:「ありがとうというべきだな」 *鍋@ふぁん> 「・・・気分は大丈夫?」 *鍋@ふぁん> (一応スイッチから手を離しません) *芝村>ヤガミ:「ああ。爽快だ。すっきりした」 *鍋@ふぁん> 「大丈夫?ヤガミ。」 *鍋@ふぁん> (心配でみつめます) *鍋@ふぁん> 「体、大丈夫?」 *鍋@ふぁん> (ヤガミの様子を観察します) *芝村>ヤガミ:「大丈夫だ、問題ない」*鍋@ふぁん> 「どこも痛くない?」 *芝村> ヤガミの瞳は絶望の色を讃えているが、もはや死ぬ気はないようだ*鍋@ふぁん> (ヤガミを支えるように側に立ちます) *芝村> ヤガミは貴方を無視した。*鍋@ふぁん> 「ヤガミ。私、こんなダメな私だけど。あなたの側にいたい。力足らずだけどささえたい。」 *芝村>ヤガミ:「必要ない」 *鍋@ふぁん> (無視をされても、側にいます) *芝村>ヤガミ:「だが、礼だけは。ありがとう。俺は何か色々勘違いをしていた。滑稽だな。本当に。現実に気付いていい気分だ」*鍋@ふぁん> 「私にはヤガミが必要です。そして、あなたがみんなの星であるように。あなたの星になりたい。あなたに必要とされなくても」 *鍋@ふぁん> 「ううん。勘違いなんてしていない!!私の力が足りなかったの。でも、でも、私・・・、今よりもっと頑張る。」*鍋@ふぁん> 「ヤガミを傷つけないように強くなる。」 *芝村> ヤガミは耳を貸さないで、ゆっくり歩き出した。何かを考えながら。*鍋@ふぁん> 「今は力が足りなくても。私は、私は、あなたを支えたい。」 *鍋@ふぁん> (ついていきます) *芝村> 貴方の声は、むなしく響いた。 *芝村> /*/ *芝村> おめでとう。ヤガミは復活した。もはや誰の力も必要ない。*鍋@ふぁん> orz *鍋@ふぁん> 絶望をひどくしてしまいました・・・。 *鍋@ふぁん> ヤガミの心に星をともしたかったのに・・・。何でもぎゅーすりゃいいってもんじゃないんですね・・・。 *鍋@ふぁん> 攻略本も教えてくれたのに・・・。死ぬ気もしないほどの絶望って・・・。ヤガミーーー *芝村> まあ。いいんじゃないかな。*芝村> 愛情はかせゲルけど、死んだらどうしようもない *鍋@ふぁん> そう言ってもらえると・・・、でも心がひどいことに・・・!! *鍋@ふぁん> このヤガミはもう自殺することはないのでしょうか?*鍋@ふぁん> (次になにかやらかしそうで、心配です) *芝村> ええ。もう自殺はないね。脱藩はした。*鍋@ふぁん> 鍋の国からいなくなっちゃったんですか!? *芝村> ええ>ふぁん *鍋@ふぁん> 攻略本バンバン使っておいて、国のみんなになんて謝れば・・・orz *鍋@ふぁん> 呼べばまた会えますか? *芝村> あえるね。 *芝村> 友情、愛情はあらゆるキャラに-4-4だ。別のよんだほうがいいんじゃない。*鍋@ふぁん> その時は、余分に10マイル・・・かかるんですよね?(ヤガミを呼ぶたびマイルすっからかん)*鍋@ふぁん> あらゆるキャラ!?みんなごめん・・・!!これは、他国の方が呼んでいるヤガミにも関係ありますか? *鍋@ふぁん> 会いに行くと自分勝手に約束したのに、会いにいきます。このままじゃ、ヤガミがあんまりだ・・・。 *芝村> これは、他国の方が呼んでいるヤガミにも関係ありますか?>いいえ*鍋@ふぁん> ほっ *芝村> まあ、でも、喪失感で胸は一杯だけど、いい気分だとは思うよ。後は、強くなるだけだ。 *鍋@ふぁん> ど、どんなヤガミになるんだろう・・・。き、嫌われていても良いので、陰からサポートしたいです。 *鍋@ふぁん> 今回の-4で、私、友情-5、愛情-2になるんですが、-のマックスも4ですか?@@ *芝村> -のマックスも4 *芝村> -4-2*鍋@ふぁん> おお!!でもすごく嫌われていることに変わりなし・・・・。 *鍋@ふぁん> 今回の敗因は、来るのに1ヶ月もかかってしまったことでしょうか?ゲームでもやってはいけないことをやってしまってましたか?(教えていただけるなら、今後の参考に)*芝村> 1月かかったのはたしかに。最初に愛情高い奴とか色々いってたんだけどね。 *芝村> ゲーム中の発言は空虚に響いてよかったよ。*鍋@ふぁん> 空虚・・・・orz *鍋@ふぁん> 次回このヤガミに会うには20マイル必要なんですよね? *芝村> ええ。20マイル。 (以下はゲーム外の話になるので割愛) 現在のヤガミ⇒鍋@ふぁん評価 : 友情-4 / 愛情-2
https://w.atwiki.jp/yj_ame/pages/231.html
ポケモン【ぽけもん】 ご存知ポケットモンスターの略称。 現在知られているのは赤緑青、ピカチュウ、金銀、クリスタル、ルビー&サファイア、 ファイアレッド&リーフグリーン、エメラルド、そしてダイヤモンド&パール。 You J@あめぞうにおいてはなぜかポケモン愛好家が多く、度々スレが立つ。 もしも3Gがポケモンだったら…などの妄想スレは、ちょっとした爆走を誘う。
https://w.atwiki.jp/alfan/pages/11.html
鍋@ふぁん の発言 こんばんは。本日22時を予約しております。よろしいでしょうか? 芝村 の発言 おまちしてましたー。どうぞー 芝村 の発言 記事ください 鍋@ふぁん の発言 では、テンダイスの申し込みをおきます。 /*/いつもお世話になっております。鍋の国です。 鍋@ふぁんの個人マイル7と藩国マイル3を消費し、1時間のミニイベントを申請いたします。 また、藩国滞在ACE1名を呼びたいと思っております。 ・参加者 国民番号 C名(入学状況) 0500133:鍋@ふぁん(入学済み) 時間は10月15日、22時を予約させていただきました。 http //cwtg.jp/bbs2/wforum.cgi?no=13272 reno=12799 oya=12799 mode=msgview よろしくお願いいたします。 鍋@ふぁん@鍋の国 鍋@ふぁん の発言 http //blog.tendice.jp/200704/article_59.html 鍋@ふぁん の発言 です。 芝村 の発言 はい。 芝村 の発言 呼ぶのは? 鍋@ふぁん の発言 前回と同一のヤガミ(イエロージャンパー)でお願いします。 あと、私のメッセは調子が悪いので、チャットでゲームをしたいのですが、よろしいでしょうか? 芝村 の発言 ええ 鍋@ふぁん の発言 http //ginbar.s14.xrea.com/cgi_bin-id3/comchat/comchat.cgi こちらになります(ミサさんが場所を作ってくださいました) あと、ありがたいことに、攻略本を使ってもよいとも言われているのですが、今日は使ったほうがよい感じなんでしょうか?(自分には自信がなさ過ぎてよくわかりません!!) 芝村 の発言 つかってもいい 鍋@ふぁん の発言 前回同様、失敗するとヤガミの命が危ないのでしょうか? 芝村 の発言 どうかな 鍋@ふぁん の発言 ちょっと今ミサさんに相談しています。 芝村 の発言 はい 鍋@ふぁん の発言 プラスになるならどうぞ使って!!とやさしいことを言ってくれました。 つ、使います。 アドバイスたくさんお願いします!!@@ 芝村 の発言 じゃお 芝村 の発言 はい。 芝村 の発言 ではあとはちゃっとでー 鍋@ふぁん の発言 はい。ではあちらで。
https://w.atwiki.jp/soyoyo/pages/75.html
タグ一覧 ロリ 後輩 作品データ タイトル ときたまふぁんたずむ 発売日 2006/04/14 名義 遠野そよぎ キャラクター名 七宮なずな (ななみや なずな) 制作元 あてゅ・わぁくす 元気が取り柄だが、ちょっと頼りない感じの後輩。 最近学園に転校してきた。 嘘が下手で正直者。悪いことは出来ない性格。 後ろめたいことでもあるのか、弱気な態度が 主人公のイジメ心をくすぐり、しょっちゅう遊ばれている。 実は主人公の師匠、七宮芹の実妹なのだが 周りにはバレていない様子。 新米除霊師、いろんな意味でチビっ子。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1636.html